抄録
【目的】極低出生体重児の発達を追跡していくと、乳幼児期には運動障害を残さずに成長し問題なしとされた子どもが学齢期では縄跳びができない、ひらがなや漢字が読めるのにかけない、ルールに従った行動がむずかしい等の集団生活をする上で不利な行動が目立つことがある。このような行動を検討するには運動発達だけでなく知的発達にも着目して考察する必要がある。極低出生体重児の知的発達について多数の報告が蓄積されており、子ども用知能検査WISCは知的発達検査法のひとつである。今回、私たちはその下位尺度である言語性IQ(VIQ ) と動作性IQ(PIQ) の差(ディスクレパンシー)が大きいことに着目し検討した。また、その出生時の条件や育成環境の影響についても検討したので報告する。【対象と方法】当院新生児医療センターを平成5年12月から平成8年7月に生存退院し、就学時にWISC-Rまたは_III_が施行できた児のうち、事後のアンケート調査で生育環境も調べられた出生体重1500g未満の極低出生体重児91名である。この91名に対してWISC-Rまたは_III_のVIQ、PIQの分布状況を解析し、出生時の条件や生育環境との相関を求め検討した。【結果】(1)就学時VIQ、PIQの得点の分布は共に正規分布し、その平均(±SD)はそれぞれ96.8(±11.96)、90.4(±13.55)であった。PIQがVIQより有意に低く、ディスクレパンシーが大きいことが統計的に証明された。(2)VIQとPIQ、IQ100以上とIQ100未満の出現率の割合を検定した結果、IQ100未満の子どもの割合はVIQに比べPIQでは有意に高率を示した。なお、IQ85以上とIQ85未満の出現率に対してはその差が認められなかった。(3)PIQ、VIQと出生時の条件(在胎日数、出生体重)との関係では、VIQは在胎日数と出生体重において、PIQは出生体重において有意な相関が認められた。(4)VIQ、PIQと生育環境(母親の年齢、学歴、就労状況、子どもの数)との相関は、極低出生体重児では成育環境のいずれにも統計的有意な相関は認められなかったが、対象を1000g未満の超低出生体重児に限定した結果、母親の学歴で相関が認められた。【考察】極低出生体重児の就学時の知的発達検査よりPIQとVIQのディスクレパンシーが大きく、極低出生体重児に見られる集団生活をする上で不利な行動の原因の一つと考察できる。さらに、VIQ、PIQは出生時の条件だけでなく生育環境からも影響を受けていることが実証された。低出生体重児の発達は適正な出生体重児よりも劣悪な環境に対する感受性が敏感でその影響をうけ易いという先行研究がある。極低出生体重児の人生の初期に関わる理学療法の早期介入プログラムでは、このような低出生体重児の発達の特徴をふまえ長期的な展望をもって立案し対応する必要があると考える。