抄録
【目的】脳性麻痺を持つ低年齢児の日常生活機能評価にPediatric Evaluation of Disability Inventory(PEDI)の使用は妥当であるか、ということについて検討した。【対象と方法】対象は当園の就学前通園児で脳性麻痺と診断された子ども29名。平均月齢は42±13ヶ月、男児17名、女児12名で、GMFCSレベルはレベル1が7名、レベル2が2名、レベル3が3名、レベル4が4名、レベル5が13名であった。PEDI原版マニュアルを翻訳したものを用いて、各担当者が母親へのインタビューで評価を行なった。評価は2回行い、その間3±0.4ヶ月の期間があった。評価の結果から各領域(セルフケア、移動、社会性)の機能的技能スケール(FS)と介助者援助スケール(CA)の尺度化スコア(SS)を算出し、(1)PEDIの各領域とGMFCSレベルの相関と、(2)3ヶ月間でのPEDIの各領域の有意差についてノンパラメトリック検定を用いて分析し、検討を行った。(3)さらに、症例を通して、3ヶ月間で示されるSSの変化について分析し、今後に効果判定を行う場合、どのような方法で行えばよいかについても検討した。【結果と考察】(1)PEDIの各領域(セルフケア、移動、社会性のFSおよびCA)と、GMFCSレベルの間にすべて有意な負の相関がみられた。(すべてp<0.001)この結果から、PEDIは粗大運動機能が軽度から重度まで、幅のある機能レベルに対応して、脳性麻痺を持つ低年齢児の日常生活機能を評価できるものであるということが確認できた。(2)PEDIの各領域におけるFSおよびCAのすべてのSS平均値は3ヶ月間で増加していた。しかし、有意な差が認められたのは、セルフケア領域と移動領域のFSおよびCAだけで(すべてp<0.05)、社会性領域のFSおよびCAには有意な差は認められなかった。この結果から、PEDIはセルフケアと移動の領域においては、3ヶ月間で機能的変化を捉えることができるということを確認できた。しかし、GMFCSレベル5の子どもだけを分析した結果からは、PEDIのすべての領域のFSおよびCAにおける3ヶ月間の機能的変化は捉えることができなかった。これについては、評価実施期間、評価基準、他の評価手段との併用などの検討が必要であると考える。(3)症例はGMFCSレベル1の3歳7ヶ月の男児。3ヶ月間でのSSの変化は、セルフケア領域のFSで+2.4、CAで-4.8であり、移動領域のFSで+5.8、CAで+18.2だった。セルフケアにおけるスコアの変化は、更衣と入浴の項目で改善が見られたものの、排泄の項目で機能の退行が見られたことが反映された結果であった。移動では、屋外歩行が実用化してきたこと、車の乗り降りや浴槽の移乗ができたことが反映された結果であった。しかし、この結果に治療の効果を位置づけることはできない。効果判定を行うためには、測定可能な治療目標と関連づけ、方法論に基づいて検討されなければならないことを確認した。