理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: HP157
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呼吸器疾患
人工呼吸器装着下での経口摂取自立を目標に包括的呼吸リハビリテーションを実施した一症例
*戸渡 敏之平嶋 隆浩中西 昭柴山 文白川 守野本 恵司隅谷 政内山 啓内藤 立暁
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抄録
【はじめに】人工呼吸器(呼吸器)装着となった重症患者は、長期IVH管理を余儀なくされるため、低栄養状態による身体機能低下や敗血症など重篤な感染症を引き起こす危険性がある。今回我々は、他職種との連携により呼吸器装着下での経口摂食を試み、自立摂取可能となり良好に経過した症例を経験したので報告する。
【症例】76歳、男性。診断名:肺結核後遺症、2型呼吸不全、肺炎、心筋梗塞、心不全。既往歴:44歳時に肺結核により胸郭形成術。当院入院前まで、呼吸不全の増悪を繰り返しA病院に2回入院、その後酸素療法を受けながらB病院に入院していた。現病歴:平成13年1月22日鼻漏と湿性咳が出現。1月25日呼吸状態が悪化、その後呼吸停止し挿管されたもののB病院に呼吸器がなく、当院入院となった。
【経過】1月29日肺炎、心不全は軽快し抜管。1月30日呼吸リハ開始。2月5日突然の発熱と呼吸不全を訴え、再び呼吸器管理(SERVO 900C)となり、心不全、肺炎の重症化と診断された、MRSA+。2月15日発熱がおこりIVH感染が原因と考えられた。2月20日気管切開術施行。3月12日主治医とスタッフで検討した結果、本人の経口での食事摂取に対するneedも高く、呼吸器装着下での摂食・嚥下訓練を進めていくこととなりST依頼。4月12日再びIVH感染による熱発。6月5日IVH抜去。6月14日ST終了Nsサイドでの摂食開始。6月25日weaning開始。7月3日MRSA-。8月14日夜間のみ呼吸器装着。8月17日VF検査、誤嚥所見なし、栄養士介入。10月29日病棟内歩行自立。
【PTの概要】呼吸器装着下での摂食・嚥下訓練に対する理学療法として、主に呼吸管理と姿勢管理を中心に行なった。呼吸管理は、Squeezingによる気道内分泌物の除去、呼吸筋強化訓練、胸郭可動域訓練などを主体に実施した。呼吸器の設定については、摂食のためには強制換気を減少させ自発呼吸に同調した設定を検討していく必要があり、摂食時はPSVモード、FiO2 0.3 、PS5cmH2Oにて、PT監視下にSpO2は90%以上という条件で行った。姿勢管理は、食事のセッティング時間を考慮し、ギャッジアップ座位で最低30分の耐久性が必要と考え、病棟Nsと連携して実施した。そして頚部のROM訓練を行ない、STと誤嚥を防止するための頚部・体幹を整えた適切な摂食姿勢を検討した。誤嚥がなく安定した摂食が可能と判断した時点で、摂食時の姿勢のポジショニングやセッティング内容に対するマニュアルを作成し、病棟Nsに指導した。
【考察】本症例では、たとえ呼吸器装着下であっても、早期より他職種との連携による包括的アプローチを行って経口摂取を可能としたことが、全身状態の早期改善、IVHの抜去、昼間の呼吸器からの離脱、ADLおよびQOLの向上に役立ったと考える。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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