理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: HO067
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呼吸器疾患
慢性呼吸不全患者の全身持久力に影響を及ぼす因子について
*竹村 雅俊間瀬 教史和田 智弘志賀 育子永井 絵里米田 千夏眞渕 敏畠中 輝昭田中 章太郎川上 寿一藤原 誠
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抄録
【はじめに】慢性呼吸不全患者の全身持久力を低下させる因子としては、肺機能障害、運動時低酸素血症、筋力低下、栄養障害など様々なものが報告されている。今回我々は、それらの内、どの因子がより重要なものであるかについて検討したので報告する。
【対象】対象は、慢性呼吸不全患者33例(平均年齢70.0±11.9歳、男性27例、女性6例)である。内訳は、肺気腫16例、気管支喘息14例、肺気腫と気管支喘息の合併2例、陳旧性肺結核1例である。肺機能は肺活量(VC)平均2072±869ml、1秒量(FEV1.0)平均842±537mlで、全例が閉塞性換気障害を示していた。Fretcher-Hugh-Jones分類は(2)4例、(3)22例、(4)5例、(5)2例であった。
【方法】全身持久力の評価は、自転車エルゴメーターにて10watts3分、その後、1分間に15watts増加させるランプ負荷法にて運動負荷テストを行い、遂行可能であった最大運動負荷強度を指標として用いた。運動時低酸素血症は、経皮的酸素飽和度(SpO2)をNELLCOR社製N-20Pを用いて測定し、安静座位の値と運動負荷テスト中の最低値からSpO2変化率({安静時SpO2-運動負荷テスト中の最低値}/安静時SpO2×100)を求めた。栄養状態は、理想体重比(%IBW=体重kg÷{(身長m)2)×22}×100)を用いた。下肢筋力は、竹井機器社製デジタルダイナモメーターを用い、椅子座位にて膝関節60度屈曲位での最大等尺性伸展筋力を3回測定し、最大値の左右平均値(kg)を検討した。
【結果】運動負荷テストによる最大運動負荷強度は、10wattsから202.5watts(平均64.6±41.5watts)で、著しく低い負荷から比較的高い負荷まで遂行できる例がみられた。SpO2変化率は、平均4.6±4.1%であり、うち、SpO288%以下まで低下する症例が7例認められた。下肢筋力は平均26.9±10.7kg、%IBWは平均94.5±15.0%であった。最大運動負荷強度と各々の因子との関係をみると、VC(R=0.72 p<0.01)、FEV1.0(R=0.83 p<0.01)、SpO2変化率(R=0.58 p<0.01)、膝伸展筋力(R=0.78 p<0.01)、%IBW(R=0.47 p<0.01)の、全ての因子において有意な相関がみられた。またどの因子がより重要であるかをみるために、重回帰分析を行い各因子の標準回帰係数を求めると、FEV1.0が0.53、SpO2変化率が-0.32と高く、膝伸展筋力は0.17、VCは0.15、%IBWは-0.1であった。
【考察】今回、各因子は最大運動負荷強度との間に有意な相関を示し、全ての因子が慢性呼吸不全患者の全身持久力低下に関係していた。また、重回帰分析の結果からはFEV1.0が最も重要な因子であり、次に運動時低酸素血症、筋力低下、VC、栄養障害(%IBW)の順であることが分かった。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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