抄録
【目的】骨格筋が萎縮すると筋を構成する筋線維や筋膜などに形態的な変化が現れ,機能低下が生じることが知られている.骨格筋に栄養素や酸素を供給する毛細血管(以下,CV)も種々の病態において,その重要性は明らかである.しかし,CVは非常に微小であることや特異的マーカーをもたないことから,通常の組織切片を用いた二次元的観察ではその同定が困難であり,CVに関する知見,特に骨格筋における知見の集積はいまだ極めて乏しい.そこで,共焦点レーザー顕微鏡を使用して,ラットヒラメ筋のCV構造を3次元に観察することを試み,筋萎縮の病態におけるCVの3次元構造の変化について解析をおこなった.【対象および方法】対象としてWistar系雄ラット(10週齢から12週齢)を使用した.Moreyの方法により非侵襲的に後肢を2週間懸垂し,筋萎縮を作成した(以下,HS).対照ラット(以下,CONT)とHSともに2週間の飼育後,pentobarbital sodium(50mg/kg, i.p.)で麻酔し,開腹した.腹大動脈にカニューレを挿入して,ヘパリン溶液およびcontrast mediumを注入し,ヒラメ筋を摘出した.摘出筋は液体窒素で急速凍結をおこないクライオスタットにて縦断および横断面で200から250μmの切片を作成した.共焦点レーザー顕微鏡(Fluoview, Olympus)で,筋切片中50から100μmに存在するCVの3次元構造について解析をおこなった.また,同時に切片の透過像についても測定し,筋線維とCVの関係について検討した.測定したCVの3次元構造から,筋線維周囲のCV径(以下,CV径)およびCV面積(以下,CV面積),筋線維短径(以下,FD),筋線維に対するCV数(以下,C/F比)の計測をおこなった.【結果および考察】Moreyの後肢懸垂法により,ヒラメ筋の筋湿重量は減少し,FDはHSで48.2μmとなり,CONTの66.1μmと比較して低下した.HSにより骨格筋が萎縮し,筋線維の縮小化が生じたことが観察された.C/F比は CONT,HSともに6から8になり,両者の間の差は観察されなかった.CVの構造を解析すると,CV径はCONTで4.6μm,HSで6.0μmとなり,筋萎縮によりCV径が拡張していることが明らかとなった.CV面積はCONTで2507.1μm2であったが,HSでは1418.4μm2となり,筋線維周囲のCV面積が低下を示した.また,CV面積をFDから算出した筋線維面積で除した指数が,CONTおよびHSともに同じ傾向にあることから,筋線維の縮小に伴いCVも順応したものと考えられる.これらの結果から,筋萎縮により毛細血管も筋細胞に適応した構造に変化したものと示唆される.