理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BO530
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運動・神経生理
運動開始時に生じる高位中枢コマンドは大動脈神経刺激で誘発される血圧反射性徐脈を抑制する
*小峰 秀彦松川 寛二土持 裕胤村田 潤
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抄録
[目的]運動は様々なリハビリテーション場面や競技で行われ,理学療法と関わり深いものであるが,運動時の循環調節は解明されていない問題が数多く存在する.動脈血圧反射は動脈血圧を一定値に保つためのネガティブフィードバック機構であり,安静時に動脈血圧が上昇すると,この反射により心拍数は減少する.しかし,運動時には心拍数および動脈血圧は同時に上昇することが知られている.この事実は運動時の動脈血圧反射特性が変化していることを示唆するが詳細は明らかでない.我々は動脈血圧反射が運動中動的に変化し,特に運動開始時の動脈血圧反射は随意運動に伴って生じる高位中枢コマンドによって抑制され,心拍数と動脈血圧を同時に上昇させるという仮説を考えた.そこで動物を用いて動脈血圧反射の求心路の一つである大動脈神経に双極電極を埋め込み,自発運動中様々な時間経過でこれを一定電圧で刺激し,得られる反射応答の変化を調べた.この動脈血圧反射応答は中枢内の反射回路の特性を表しており,それが自発運動でどのような影響を受けるか検討した.[方法]実験に先立ち,ネコを訓練して20-40秒間の前肢によるレバー押し運動を習得させた.運動習得後,ハロセン麻酔下で左大動脈神経に双極電極を埋め込み,左頚動静脈にカテーテルを挿入した.手術から回復後,安静時,レバー押し運動中,および運動後に大動脈神経に埋め込んだ双極電極を一定電圧で刺激して人工的に血圧反射を誘発し,心拍数と動脈血圧の変化を記録した.特に高位中枢コマンドの影響を調べるために,活動筋からの求心性入力がない運動開始直前においても大動脈神経を刺激し,反射応答を調べた.[結果]安静時に大動脈神経を刺激すると血圧反射応答として徐脈と降圧が見られた.この徐脈応答は運動開始時に安静時応答の62 ± 4 %まで一時的に抑制された.徐脈応答の抑制はレバーを押す直前,およびレバーを押す前の前肢挙上直前でも見られた.運動後半の徐脈応答は有意ではないが抑制される傾向がみられた.運動終了時にレバーから上肢を戻す時再び強い徐脈応答の抑制が見られた.一方,大動脈神経刺激による降圧応答は運動による影響を受けなかった.[考察]以上の結果から,大動脈神経刺激で誘発される血圧反射性徐脈は,動的にかつ短い時間経過で運動中に変化することを明らかにした.特に,運動開始時の徐脈応答は活動筋からの求心性入力ではなく運動に伴って生じる高位中枢コマンドによって抑制されることを明らかにした.大動脈血圧受容器反射は血管運動と心律動を調節する経路に分かれ,高位中枢コマンドは血管運動を調節する経路は抑制せず,心律動を調節する経路を抑制することが示唆された.この大動脈受容反射の抑制が運動初期の心拍数上昇に関与すると考えられた.したがって運動時,特に運動開始時の循環調節には高位中枢が重要な役割を果たすと考えられる.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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