理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: IO840
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循環器疾患
心不全と運動療法
年齢とADLとの関係
*根木 亨永谷 牧子村岡 卓哉大堀 克己川初 清典
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キーワード: 心不全, 運動療法, 年齢
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抄録
【緒言】心不全患者のリハビリテーションにおいては、生命予後の改善と並んでQOLの改善が重要な目標となる。とりわけ高齢者は安静により容易にADLレベルが低下するため、早期運動療法による脱調節の予防がQOLの改善において重要である。今回、慢性心不全の急性増悪で入院し運動療法を行った症例について、年齢と脱調節の関係について退院時のADLレベルを指標として検討した。【運動療法】急性期を離脱後から負荷量を漸増。有酸素下トレーニングと現有筋力、特に下肢筋力の維持・強化を図り、入院前のADLレベル以上への到達を目的とする。【対象】1999年4月から2002年3月の間に当院にて慢性心不全の急性憎悪で入院、急性期を離脱後に運動療法を実施した症例60例(男性32例、女性28例、平均年齢74.4±12.4歳)。疾患別内訳は、虚血性心疾患26例、弁膜症7例、心筋症7例、高血圧性心疾患20例であった。入院時での心機能(左室駆出率、心係数)は49.9±17.1%、2.8±1.0、NYHA分類は2.9±0.8であった。【検討I】全対象を年代別に70歳未満(I群:19例)、70歳以上80歳未満(II群:15例)、80歳以上(III群:26例)に分類し,運動記録および病棟記録から入院前(在宅時)と退院時獲得ADLレベルを後方視的に調査、運動耐容能に換算した結果から、平地歩行以下レベル(G;3METs以下相当)、階段昇降レベル(S;3から4METs相当)、4METs以上の運動療法実施可能レベル(F;4METs以上相当)の3段階で比較した。【結果I】G、S、Fの割合(%)は入院前の段階で、I群(57.9、31.6、10.5)、II群(66.7、33.3、0.0)、III群(92.3、7.7、0.0)であったのに対し、退院時ではI群(26.3、73.7、0.0)、II群(40.0、26.7、33.3)、III群(80.8、19.2、0.0)で、各群間で各段階の割合に有意(p<0.01)の偏りがあった。【検討II】年齢が退院時到達ADLレベルに影響を及ぼした要因について、在院日数と臨床的に経験される合併症(肺炎、腎不全)の頻度の点から比較した。【結果II】在院日数(日)はI群37.3±21.8、II群54.9±34.2、III群50.2±24.6でII群、III群がI群に比較して1週間程度有意に長かった(p<0.05)。合併率(%)はI群21.1、II群56.3、III群76.9で高齢であるほど合併率は増大する傾向にあった。 【結語】高齢の心不全患者の場合、退院時到達ADLレベルが低下することが予測され、その原因として在院日数の増大(脱調節の助長)、合併症の存在(画一的治療アプローチの不適応性)、入院前段階からのADLレベルの低下が考えられる。基礎疾患を有する高齢者への在宅時からの脱調節予防を目的とした包括的リハビリテーションプログラムの確立が望まれる。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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