抄録
【はじめに】国立身体障害者リハビリテーションセンター病院では研究所と協同で,1998年より障害者のいす,車いす,電動車いす等を製作する目的でシーティングクリニックを開設し対応にあたってきた。その後,脊髄損傷者の褥瘡術後や車いすクッションなどの確認のため,車いす上での座圧測定をするようになり,褥瘡予防アプローチも施行することとなった。内容は問診,創の位置確認,接触圧測定,対応方法提案等からなり,必要に応じて身体機能や動作の確認も行う。脊髄損傷者に対応していると,多くの者は自立した社会生活を送っており,褥瘡原因は多岐にわたっていることが判明した。そこで今回,シーティングクリニックで対応した脊髄損傷者の褥瘡原因についてまとめたので報告する。【結果】対象:平成10年5月から平成12年10月までにシーティングクリニックにて対応した101例(男性82例,女性19例),年齢14歳から75歳,平均37.2歳である。疾患:頚髄損傷39例(38.6%),胸髄損傷48例(47.5%),腰髄損傷11例(10.9%),不明3例(3%)である。併存症として切断2例,多発性硬化症1例,糖尿病2例である。活動レベルは就労あるいは学生52例(51.5%),自宅あるいは施設26例(25.7%),入院11例(10.9%),不明5例(6.0%)であった。ADLは自立70例(69.3%),介助28例(27.7%),不明3例(3%)であった。褥瘡の羅患は初発15例(14.9%),2回目13例(12.9%),3回目以上62例(61.4%),不明11例(10.9%)である。褥瘡の部位は坐骨部48例(47.5%),仙骨部37例(36.6%),大転子部10例(10.0%),背部8例(7.9%),足部7例(6.9%),尾骨部6例(6.9%),膝部1例(1.0%),股離段の断端部1例(1.0%)であった。このうち17例は褥瘡部位が複数発生しており,それらを含んでいる。圧迫やずれの要因:褥瘡発生の要因となる圧迫やずれを起こしたものは,車いすの座クッション29例,車いす背9例,車いす形状4例,車いすフットレスト2例で車いすが原因となるもの44例(43.6%)。寝具22例,自動車シート3例,いす7例,畳,浴室の床各7例,便器1例,そして不明7例と車いす以外が47例(46.5%)であった。 また,誘引となったと思われる要因として,体調不良7例,旅行5例,デスクワークによる残業3例,引越し1例,スポーツの試合1例,酔って寝た1例などが上げられた。【考察】褥瘡発生原因は車いすに関しては,クッションの調整や劣化,車いす形状などの問題も多かった。車いす以外では寝具やトイレ,自動車などへの配慮はあまりされておらず,車いす上での褥瘡予防しか考えていないという問題もみられた。旅行や体調が不良な時,あるいは変形や肥満などの身体的要因がある場合にはより一層の注意が必要であると言える。褥瘡予防アプローチ施行から脊髄損傷者の褥瘡を日常生活全般の問題としてとらえ,適切な情報を供給する必要性を感じた。