理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: LO436
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スポーツ
スポーツ復帰遅延した初期腰椎分離症の一症例
*杉浦 史郎生野 貴義渡邊 和美小原 弘行豊岡 毅鈴木 博子西川 悟木下 知明
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抄録
【はじめに】 近年,磁気共鳴画像(以下,MRI)の進歩によりX線撮影では診断不可能である初期腰椎分離症(以下,初期分離症)の診断が可能となっている.今回我々は,初期分離症の理学療法を施行し,難渋した症例を経験したので報告する.【症例紹介】 男性,17歳.競技名:サッカー(高校部活動レベル),体重:59kg【経過】 平成14年1月9日,右側腰痛の主訴により当院受診.理学療法開始,運動中止の指示となる.1週後,腰痛が継続していたため腰部MRI(第1回)を施行し,右第4腰椎関節突起間部(以下,分離部)にT1画像低輝度・脂肪抑制画像高輝度(以下,炎症所見)が認められ初期分離症と診断される.同日,簡易腰部固定帯処方,運動中止継続の指示となる.2週後,腰痛軽減.5週後,右側腰痛消失,左側腰痛出現.MRI(第2回)にて,引き続き右第4腰椎分離部の炎症所見が認められた.7週後,左右腰痛消失,ジョギングレベルの運動開始.8週後,部活動後,腰痛出現.運動中止の指示となる.その後,腰痛軽減.12週後,遠征のため自転車に乗る(40分間),その後,腰痛増加.MRI(第3回)にて左右第4腰椎分離部の炎症所見が認められた.24週後,左右腰痛消失,MRI(第4回)にて左右第4腰椎分離部の炎症所見の改善が認められたので,サッカー復帰を許可した.現在,腰痛の再発なくサッカー活動に励んでいる.理学療法は,疼痛除去目的に徒手療法,物理療法を施行.疼痛軽減期は,腹部,腰背筋の等尺性収縮訓練,脚部の等張性収縮訓練を施行した.【考察】 本症例は治癒までの間,4度のMRIを施行している.内,スポーツ復帰評価のため施行したMRIは第2,4回であった.この両者間の相違は,画像上に炎症所見が認められたか否かである.第2回MRIは,炎症所見が認められたが疼痛はなくスポーツ復帰に至った.その結果,1週後,再発している.第4回MRIは,炎症所見,疼痛が共になく復帰し経過良好であった. 別報より,炎症所見改善後,初期分離症の復帰成功例が存在していることから,早期復帰が本症例の治癒遅延した要因の一つと考えた. 初期分離症は疲労骨折と類似しており,他の骨部位の疲労骨折と同じく,疼痛消失期とMRI上の炎症消失期は一致しない.また,第3回MRIで左側分離部の炎症所見が認められたことから,初期片側分離段階から反対側関節突起間部へ相当なストレスが発生していたことが考えられる.このように初期分離症は,非常に繊細な状態であり疼痛の有無,時期,MRI所見を踏まえて段階的理学療法を施行する必要があると考えた.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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