抄録
【目的】中枢神経系の情報処理と運動のメカニズムを反映する指標として,CNVやP300が知られている.本研究の目的は,CNVおよびP300について刺激間間隔(ISI)と反応頻度を変化させた弁別課題を設定し,時間的定位や情報処理における中枢神経系機能の特徴を導き出すことである.【方法】対象は健常人12名(全員右利き)であった.被験者には聴覚刺激による単純弁別反応課題を行わせ,予告刺激(S1)を1kHzでスピーカーから与え,反応刺激(S2)はヘッドホンを介して与えた.S2では反応を行うattend=at(2kHz)と反応を行わないignore=ig(1kHz)を弁別させ,atでは右手によるボタン押し動作をなるべく早く行うよう指示した.本実験ではISIとして0.5,1.0,2.0sの3種類を設定し,各ISI毎にatの頻度をランダムに20%(RA),80%(FR),100%(AL)になるよう呈示した.CNV,P300を解析するために, F3,Fz,F4,C3,Cz,C4,P3,Pz,P4の9ヶ所に記録電極を設置した.【結果】CNV ISI=0.5条件ではF3,F4においてALよりもRAにおいて有意な電位の増大が認められた.1.0s条件では導出部位F3のCNV1とCNV2の合計値(all-CNV)ではALに対してFR,RAが有意に増大し,これはCNV2においてもこの傾向があり,Fz F4においても同様な結果であった.しかし,ISI=2.0条件では,いずれの成分においても有意差は認められなかった. P300 A-I比較の振幅変化としては,全ての導出部位でISI=0.5条件においてFRの場合,atよりもigで振幅が有意に高く,この変動はISI=1.0,2.0条件においても同様であった.しかしRAでは振幅の有意差をを示したものはなかった.導出部位ごとの反応頻度条件の比較では全てのISIにおいて反応頻度が少ないものに有意な振幅の増大を認めた.【考察】CNVの後期積分値は,前頭部を中心に増大が見られたが,この変動は運動反応に起因する神経活動ではなくむしろ刺激情報の評価を中心とした準備過程を反映したものであると推察した. Nakajimaらは,P300はISIの増加と共に電位が増大し,頻度との関連ではその増加と共に減少を報告したが本研究でも同様の結果であった.またA-I比較では,全てのISI条件においてig P300がFRにおいてのみ振幅の増大があったことから反応抑制過程に関連しているのではないかと考えられた.以上の如く,情報処理過程に対する刺激頻度の影響は, uncertainty resolutionとして機能する場合と,積極的運動反応抑制として作用する2つの側面がある可能性があり,さらにこれは時間的要素の変化という外因性要因に影響され難い特徴があると考えた.これに対してS2以前のCNV活動は,刺激情報の検出に対する準備を反映し反応頻度がより稀なものに電位が高く,S2以降の一様な反応を導くために調整していると思われた.