抄録
【はじめに】近年、EBPTが盛んにとりあげられており、我々が実施してきた理学療法をQOLの側面から評価し、Evidenceを明らかにすることは、リハビリテーションの質的向上を考える上で重要である。 今回我々は、在宅高齢大腿切断者に対するアウトカム研究として健康関連QOLの包括的尺度であるSF-36と生活実態調査を実施したので報告する。【対象と方法】過去10年間に当センターに入院した、現在65歳以上の在宅高齢大腿切断者37名を対象に郵送質問紙法にてSF-36と生活実態調査の2種類のアンケートを実施した。SF-36は、身体機能(以下PF)、日常役割機能・身体(RP)、日常役割機能・精神(RE)、心の健康(MH)、体の痛み(BP)、全体的健康感(GH)、活力(VT)、社会生活機能(SF)の8項目の下位尺度からなり、それぞれ100点満点に換算できる。生活実態調査は、切断原因、合併症、非切断側下肢の問題、義足使用頻度、義足歩行能力の5項目からなる。 今回、国民標準値(以下、国標値)との比較、各下位尺度と生活実態調査の5項目との関係について、切断原因を血行障害と外傷他、合併症数を1つ以内と2つ以上、非切断側下肢問題の有無、義足使用頻度を週2,3日から毎日と月1,2日、義足歩行能力を連続歩行距離100m以内と100m以上のそれぞれ2群に分けて比較した。統計学的分析にはMann-WhitneyU-testを用い、危険率5%未満を有意水準とした。【結果】有効回答数は20名(男性13名、女性7名)、平均年齢71.8歳であった。切断原因ではRPを除く全ての下位尺度において血行障害が低く、PF、VT、SFは有意に低値を示した。合併症数では、SFとRPを除く全ての下位尺度において、2つ以上合併症を有する切断者が低く、GH、BPでは有意に低値を示した。非切断側下肢の問題の有無では、問題有りが全ての下位尺度において低く、PF、SF、GH、REでは有意に低値を示した。義足の使用頻度では、月1.2回しか使用しない切断者が全ての下位尺度において低値を示し、VTとREでその傾向が強かった。義足歩行能力では、連続歩行距離が100m以上可能な切断者が全ての下位尺度において高く、PF、SF、BP、RPは有意に高値を示した。国標値の同性、同年齢層との比較では、女性大腿切断者の方が、男性大腿切断者に比べRP、SF、REにおいて低値を示した。【考察】切断原因である基礎疾患や合併症に対する継続した医学的管理、非切断側下肢の痛み、機能低下に対する予防とアプローチ、様々な義足の使用目的、ライフスタイルを考慮したADL練習の重要性が再確認された。また、国標値との比較より女性大腿切断者ではIADL練習の重要性が示唆された。義足歩行能力では、義足歩行練習のゴール設定に難渋することが多い高齢大腿切断者に対し、具体的な目標提示として連続歩行距離100m以上が有用である可能性が示唆された。高齢大腿切断者のリハビリテーションを進めていく上で、切断者や家族を中心としたチームアプローチを実施することがQOL向上につながると考えられた。