理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP184
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測定・評価
膝関節回旋可動域計測についての検討
*鈴木 克彦伊橋 光二南澤 忠儀百瀬 公人三和 真人
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キーワード: 膝関節, 回旋, ROM計測
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抄録
【はじめに】 膝関節(脛骨大腿関節)の回旋運動は,下肢全体の回旋運動には必要不可欠である。しかしながら,膝回旋可動域はゴニオメーターを用いて計測するのは極めて困難である。現在明らかにされている計測方法は,超音波,レントゲン,CTを用いたものであり,簡便な方法は明らかにされていない。本研究の目的は,解剖学的標点を基に,臨床で有用かつ簡便な方法としてdeviceを用いた膝回旋ROM計測の方法を試み,定義されている股関節の回旋ROを参考にして,左右差から検討したので報告する。【対象と方法】 対象は下肢に何らかの障害や既往のない健常成人34名(男性16名,女性18名),平均年齢20.5歳である。膝回旋ROMの計測は,VICON clinical managerで使用するKnee Alignment Deviceを大腿骨内外側上顆および脛骨・腓骨の内外側果に貼付した。被験者は膝関節90°屈曲した腹臥位となり,1名の理学療法士が他動的に内外旋させ,下腿長軸延長線上からデジタルカメラを用いて記録した。記録した画像はPCに取り込み,内旋および外旋時の大腿骨内外側上顆を結ぶ線と脛骨・腓骨の内外側果を結ぶ線のなす角度を1°単位で計測した。股関節の回旋ROMは,股・膝関節を90°屈曲した背臥位でゴニオメーターを用いて1°単位で計測した。統計学的検定は相関係数の検定を用い,危険率5%を有意水準とした。【結果】 被験者34名,68関節における股関節の内外旋の合計ROMの平均(SD)は,右86.8°(10.8°),左88.5°(9.1°)であり,左右のROMの間に強い相関関係が認められた(p<0.001)。膝関節の内旋と外旋の合計ROMは右44.6°(5.5°),左42.7°(7.1°)であり,左右のROM間の相関は弱かった。そこで,膝の内旋および外旋ROMの左右差が5°以上認めた被験者は,34名中18名(53%),23名(68%)であった。【考察およびまとめ】 膝関節回旋ROM計測には,股・足関節の回旋運動や皮膚の動きが影響すると考えられる。本研究では被験者は複臥位として股関節の影響を最小限とし,純粋な膝回旋を測定するため,大腿骨内外側顆と脛骨・腓骨の内外側果のなす角度を回旋角度と定義した。しかしながら,股関節の回旋ROMに比べ,膝関節は対象の半数以上が5°以上の左右差を認めた。したがって,膝関節の障害を有する症例の膝回旋ROMを健側(非障害側)ROMと比較する際,十分な注意が必要であることが示唆された。今後,本研究の膝回旋ROM計測方法の信頼性や妥当性を検証し,臨床で応用できるよう継続的な研究が必要であると考える。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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