理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BP123
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運動・神経生理
皮膚冷刺激下での低負荷筋力トレーニングの効果
*内 昌之古賀 奈美大国 生幸遠藤 剛岡本 有美子地原 千鶴鶴岡 広原田 孝室 増男
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キーワード: 冷刺激, 筋力増強, 筋電図
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抄録

〔目的〕下肢の骨関節疾患症例における非術側筋の低負荷筋力トレーニングを25℃の皮膚冷刺激を付加して行い、筋放電パターンの変化から著明な筋力利得の要因について検討したので報告する。〔対象〕対象は両側変形性股関節症2例、両側大腿骨頭壊死2例、両側変形性膝関節症1例、年齢40_から_70才、男性2名、女性3名で、対象筋は非術側の膝関節屈筋群とした。〔方法〕椅座位で膝関節90°屈曲位を保持し、膝関節屈筋による最大随意収縮力(MVC)を測定した。表面筋電図(EMG)は、内側ハムストリングス(HAM)のモーターポイント付近に貼付した皿型電極から双極誘導した(TC=0.03sec、HC=1kHz)。HAMの皮膚上に限局した25℃の冷刺激を冷却液潅流式冷却装置で加えた状態で、30%MVC負荷に相当するエラスティックバンドを用いた抵抗運動を行った。HAMのトレーニングは30%MVC負荷の膝屈伸運動(収縮3秒、弛緩3秒のリズム)を10回繰り返し、3分間の休憩をはさんで5セット実施した。トレーニングの頻度と期間は週3回、6週間実施した。トレーニング開始後MVCを2週毎に測定し、その30%MVCをその後のトレーニング負荷とした。これらすべての導出信号はデジタルテープレコーダーに記録し、コンピューターによって最大張力(Peak force)、力積(Impulse)、張力発揮率(dF/dt)、積分筋電図(iEMG)、平均周波数(MPF)を求めた。冷刺激大腿背側部の皮膚温を25℃に維持して測定とトレーニングを実施した。〔結果〕トレーニングによる筋力利得(Impulse)はトレーニング前と比較して2週後30%、4週後40%、6週後55%と著明に漸増した。この変化に対するiEMGとMPFは、4週後まで対照的増減変化を示した。iEMGは減少し、MPFは増加した。Impulseに対するiEMGトレーニングとMPFの比は、両者ともトレーニング経過に伴って増加した。MVCのdF/dtは、iEMGおよびMPFとの有意な相関関係を示した。トレーニングによって大きなdF/dtが出現すると、EMGの集中放電によってiEMGは増加し、MPFは逆に減少した。〔考察〕今回の調査で冷却刺激により少ない筋活動で30%MVCが発揮でき、MPFの増加傾向も認められた。筋肥大を伴う筋力の向上では、通常MVCの増加とともにMPFやiEMGの値も増加するが、冷刺激下でのトレーニングによりMPFの増加に対してiEMGは減少を示した。MPFの増加は運動神経細胞の非同期的活動に関与するため、皮膚冷刺激が選択的に速筋のα運動神経細胞の活動強化に作用した結果、筋力の向上が得られたと考えられる。この結果より至適温度の冷刺激下での低負荷トレーニングは早期運動療法において有用な手法と考えられた。

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