理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP376
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測定・評価
慢性疼痛患者の心理的因子の影響
*中村 幹夫種池 英次手塚 康貴藤原 求美橋本 務(MD)
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キーワード: 慢性疼痛, 心理的要因, 評価
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抄録
【はじめに】 フロイトは、19世紀後半、痛みを心理学的に捉えようとした。それ以降、痛みには、「感覚」としての面だけでなく、「感情」としての面もあることが注目されるようになった。近年、痛みと心理的要因との関係が理解されている。しかし、臨床場面で、この問題を扱った研究は少ないように思われる。そこで今回、我々は、痛みと心理的因子の関係について検討し、若干の知見を得たので以下に報告する。【方法】 肩関節周囲炎など、3か月以上持続する慢性疼痛をもつ12名をvisual analogue scale(以下VAS)により2群に分けた。被験者12名のVAS平均値を基準として、平均値以上をH群、平均値未満をL群とした。H群は、男性2名、女性4名の計6名、平均年齢64歳、L群は、男性1名、女性5名の計6名、平均年齢60歳であった。各群のVAS平均値は、H群59.67、L群24.67であった。 2群間での心理的因子の影響を検討するため、日本語版hospital anxiety and depression scale(以下HADS)を使って、不安と抑うつの状態を評価した。さらに、不安になりやすい性格についても、日本語版state - trate anxiety inventory の特性不安要素(以下STAI)によって検討した。 2群間について、HADSの不安要素(以下不安要素)、抑うつ要素(以下抑うつ要素)、STAIの比較を行った。統計分析には、Mann - Whitney U testを使用した。また、各スケールの判定結果から、高不安状態や高抑うつ状態にある被験者についても検討を行った。【結果】 不安要素と抑うつ要素は、2群間に有意水準5%以下で有意な差が認められ、STAIには、有意な差は認められなかった。HADSは、それぞれ9点以上を、高不安状態と高抑うつ状態と判断する。H群は、高不安状態5名、高抑うつ状態3名であった。L群の被験者には、高不安状態、高抑うつ状態ともに認めなかった。STAI において、不安になりやすい性格(男性44点以上、女性45点以上)は、H群5名、L群2名であった。 H群には、高不安状態、高抑うつ状態、不安になりやすい性格のいずれにもあてはまらない被験者は、1名しかいなかった。【考察】 今回の結果では、痛みの強い被験者には、高不安状態や高抑うつ状態にある者が多かった。痛みに心因性の問題が付随する場合、患者は、痛みに対して誤った解釈を行い、疼痛行動を増強させることが考えられる。現時点では、心理的問題と痛みとの因果関係は明確ではない。そのことを考えると、特に、痛みの強い慢性疼痛を治療する場合には、心理要素を含めた多方面からの治療を考える必要性があると思われる。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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