理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP379
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測定・評価
頭位変化を取り入れたバランス評価の試み
*吉田 昌子山口 光国大野 範夫筒井 廣明
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抄録
【緒言】転倒の危険のある動作では、目的達成のみならず安全確保も欠かせないが、対象物を見るために頭位を変えることは重心の位置や運動速度に大きく影響を与え、より多くの身体機能を動員する必要を生じる。しかし臨床で簡単に行えるバランス評価で意図的に頭位を変えるものは一般的ではない。今回、頭位の変化を取り入れたバランステストを考案し、実際に行って頭位を変化させないテストと結果を比較したのでここに報告する。【方法】被検者は20・30代の成人男女各10名の計20名で年齢29.2±5.4(平均±SD)歳。下肢に既往があるのは、膝靱帯損傷が2名、足関節捻挫が2名であった。被検者は規定された左片脚立位から左踵と右上肢を最大挙上する(以下‘上方テスト’)、右手で左踵に触れる(以下‘下方テスト’)という2つの動作を、各々前方を注視して行う、右手を注視して行う、という2条件下で行う。各動作は2秒で行い、2秒で開始肢位に戻るよう指示した。測定はランダムな順番で行い、左足の位置を変えない・右足をつかない・時間に合わせて左踵を動かせる、という3点を基準として可不可を決定した。測定前の練習は行わなかったが、指示が理解されなかった場合や検者が判定困難と判断した場合には最高2回までやり直しを行った。【結果】‘上方テスト’、‘下方テスト’の順に結果を示す。()内の数字は20代の人数の内訳である。「頭位によらず可」2(1),15(5)名、「前方注視のみ可」9(3),4(4)名、「右手注視のみ可」1(1),1(1)名、「頭位によらず不可」8(5),0名であった。下肢の既往のある者で「頭位によらず不可」は1名のみであったので、既往をもつ4名を対象から除外しなかった。【考察】今回のテストは、「高いところに手を伸ばす」、「しゃがんで踵に触れる」という日常的な動作を反映すること、簡便であること、成否が分かれやすいことに着目して考案したものである。‘上方テスト’は頭位によらずできなかった者が40%を占め、特に20代でできない者が多かったことが予想と異なっていた。これは30代との身体構造の差や幼少時からの生活様式の差によるかもしれない。測定後、頭位による下肢への影響を知るため、‘上方テスト’で前方注視のみ可であった者の中から男女2名の動作をビデオ撮影し、膝関節の運動を解析した。結果、2名とも手を注視すると関節角加速度の正負が逆転する回数が多くなり、姿勢保持のためより微細な調整を要求されて遂行不可となったことが推測される。今回の結果より、頭位によって難易度が変化することが示され、評価の一要素として頭位変化を取り入れることは、目的動作を安全に行えるかどうかを知るために有効であると考えられる。今回の研究は一つの導入であり、今後もバランスを構成する要素・機能に関し継続して調査を行っていきたい。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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