理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP723
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測定・評価
上肢測定肢位及び深呼吸による血圧の変化
*齋藤 妙子大橋 ゆかり
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キーワード: 血圧測定, 上肢肢位, 深呼吸
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抄録
【はじめに】理学療法士にとって血圧測定は,リスク管理の上でも重要である。一般的に測定部位を心臓の高さと同じ位置にすること,測定姿勢が立位か臥位かによって血圧が変動することは知られているが,臨床や学生実習の中で上肢の測定肢位の曖昧さが多々見受けられる。また,高血圧を示した場合に深呼吸を行わせて再測定することは臨床上よく見られる。そこで,本研究では上肢肢位と深呼吸による血圧への影響を検討した。【方法】測定肢位別の血圧測定の対象は,健常成人女性12名(年齢19.9±0.8歳)であった。測定は自動血圧計(テルモ電子血圧計ES-P202)を使用し,同一検者で測定を行った。測定条件は車椅子座位とし,安静5分後より測定を開始した。上肢測定肢位は3種類(水平位(肩関節屈曲約60度,肘関節伸展位),屈曲位(肩・肘関節約45度,前腕を車椅子のアームレスト上に置く),下垂位(肩関節屈曲約35度,肘関節軽度屈曲位))とした。測定は水平位を基準とし,次に屈曲位・下垂位または下垂位・屈曲位の2パターンの順番で行い,各測定間は1分以上の間隔をおいた。深呼吸前後の血圧測定は,前述の12名中の9名(年齢19.9±0.9歳)を対象とした。水平位での測定後,深呼吸を20回行ってもらい,直後に加圧を開始し測定を行った。【結果】測定肢位別の血圧の平均値は,収縮期血圧では水平位96.8±9.8mmHg,屈曲位100.7±7.2mmHg,下垂位103.5±4.4mmHg,拡張期血圧では水平位56.3±7.7mmHg,屈曲位67.0±7.4mmHg,下垂位69.2±8.2mmHgであった。測定肢位による血圧の変化は分散分析及びpost hoc test (Fisher’s PLSD) により分析をした。拡張期血圧,収縮期血圧とも肢位の効果が有意であった(拡張期:df=3/33,F=26.855,p<0.0001 収縮期:df=3/33,F=3.693,p<0.05)。拡張期血圧では,水平位での測定に比べ屈曲位・下垂位で有意に高値を示し(いずれもp<0.0001),収縮期血圧では,水平位に比べ屈曲位で有意な上昇(p<0.05),下垂位でも水平位に比べ上昇傾向(p<0.1)であった。深呼吸前後の血圧についても分散分析を行ったが,有意差は認められなかった。【考察】上肢肢位別測定の結果,屈曲位・下垂位の拡張期血圧,及び屈曲位の収縮期血圧は水平位での測定に比べ明らかに高くなった。また,下垂位の収縮期血圧でも高くなる傾向が見られた。以上より,臨床場面においてやむを得ず測定肢位を変更する場合には,前腕の位置によって血圧に変動があることを念頭におく必要がある。また,深呼吸20回後の血圧は基礎血圧(早朝覚醒時朝食前血圧)とほぼ同じであるという報告や,高血圧患者の10回深呼吸による降圧効果の報告もあるが,正常あるいは本研究での症例のように低血圧傾向の場合には,深呼吸後の血圧は必ずしも降下するとは言えないようである。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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