理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: NP724
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測定・評価
Borg尺度の変更が統合失調症の自覚的な負担度に及ぼす影響
*山下 久実細井 匠秋元 拓記藤原 康紀牧野 英一郎武田 秀和
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抄録
【目的】統合失調症者には,身体の疲労感や違和感を的確に表現しにくい人がいる。我々はこれまでに,Borgの原型スケール(O-RPE)を用いて自転車エルゴメータを用いた運動負荷テストを実施し,評価してきた。経過の中で原型尺度では表現がしにくいという声が聞かれたが,統合失調症者は「慣れるのに時間がかかる」「一度に沢山の課題に直面すると、混乱する」などの行動特性があり,尺度の変更については課題であった。今回は,運動負荷試験で使用しているBorgのO-RPEを修正スケール(M-RPE)に変更した事による影響を検討した。【対象】当院に通院,又は入院中の統合失調症者の中で,2年以上理学療法プログラムに参加した10名(男性7名,女性3名)。平均年齢50.2歳,身長164cm,体重71.8kg、罹病歴23.1年。対象者は6カ月毎に実施している運動負荷試験でBorgのO-RPEを過去2回以上実施した者である。【方法】6カ月毎に実施している運動負荷試験において,BorgのM-RPEを用い2回評価した。プロトコールは,1段階3分間で20Wずつ漸増する多段階連続負荷法とした。運動負荷試験の各段階終了前に心血管反応,M-RPEを用い下肢の負担状況を測定した。この間の理学療法プログラムは,自転車エルゴメータを主に45分間/回,1から2回/週の頻度で実施した。運動負荷試験の結果から心拍水準(%HRmax)を算出し,O-RPE及びM-RPEとの相関関係を求めた。【結果及び考察】4回の運動負荷試験の中で全対象者が達成できた負荷値は2段階(40watt)であった。そこで変更直前のO-RPEを用いた2回とM-RPEを用いた2回について,運動負荷試験の2段階と終了段階の%HRmaxと各RPEとの相関係数を求めた。O-RPEは1回目r=0.5588と2回目r=0.7532,M-RPEではr=0.7071と r=0.7953で,尺度変更に伴う影響は認められなかった。尺度変更後,より適切な身体疲労を訴えることが出来たことで,M-RPEの方がO-RPEより慣れやすく,表現しやすいと考えられる。又,定期的に継続して理学療法プログラムに参加することの重要性は,それによる身体疲労の定期的なフィードバックにより適切に訴えることが出来たと考える。尺度変更後,0から始まり10で終わる修正尺度(M-RPE)の方がより的確に伝えやすいと言う感想が多く聞かれた。【まとめ】統合失調症者が身体表現を適切に他者に伝えられることは,状況の把握,症状の再熱や悪化を防ぐ有効な手掛かりとなることが示唆された。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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