抄録
【はじめに】我々は,ハンドヘルドダイナモメーターに固定用ベルトを装着することで筋力の強い被検者,体格の小さな検者においても良好な再現性が得られる膝伸展筋力の測定方法を考案してきた.今回は,同一姿勢でベルトを使用した膝屈曲筋力の測定方法を考案したので,その再現性について,健常成人,高齢患者を対象として検討した.【対象と方法】対象は健常成人18名36脚(男性10名,女性8名,平均年齢29.7歳),高齢患者20名38脚(男性5名,女性15名,平均年齢72.9歳)であった.疾患内訳は下肢・脊椎骨折8名,人工関節置換術後5名,変形性膝関節症2名,その他5名であり,運動麻痺を有する脚は対象から除外した.HHDにはアニマ社製μTas MF-01を使用した.膝屈曲・伸展筋力の測定は,プラットフォーム上椅座位下腿下垂位で実施した.膝屈曲筋力の測定では,被検者の下腿遠位部後面に面ファスナーでセンサーを固定し,前方の検者の下肢とベルトで連結した.膝伸展筋では,面ファスナーでセンサーを被検者下腿遠位部前面に固定し,後方の支柱とベルトで連結した.いずれも,ベルトの長さは被検者の下腿が下垂位になるように調節した.検者間の再現性を検討するために,検者A(男性,24歳,身長165cm,体重65kg),検者B(男性,23歳,身長166cm,体重57kg)の2名によって測定を実施した.測定は一側の膝伸展筋力を30秒間の休息をはさんで2回実施し,2分間の休息後に同側の膝屈曲筋力を同様に2回測定した.そして,いずれも最大値を採用した.また,検者A・Bの測定は日を変えて実施した.分析方法としては,検者間再現性について対応のあるt検定,および級内相関係数(ICC)を用いて検討した.【結果・考察】膝屈曲筋力値は検者A・Bの順に,健常成人28.2,29.0kg,高齢患者10.9,11.1kgであり,健常成人,高齢患者ともに検者間で有意な差を認めなかった.ICCは,健常成人,高齢患者の順に0.936,0.943であり,再現性は極めて良好であった.同様に膝伸展筋力値は,検者A・Bの順に,健常成人53.9,54.3kg,高齢患者18.6,18.3kgであり,検者間で有意差を認めなかった.ICCは健常成人,高齢患者の順に,0.930,0.956であり,膝屈曲同様に良好であった. 今回の膝屈曲筋力の測定方法は,健常成人,高齢患者いずれにおいても膝伸展筋力と同等レベルの良好な再現性を有していた.また,本測定方法は,膝伸展筋力の測定と同体位で実施可能であり,短時間で測定可能なことも利点と考えられた.膝伸展筋については,先行研究と同程度のICCを今回も認め,良好な再現性を有することが再確認された. 以上のことから固定用ベルトを併用した今回の膝屈曲・伸展筋力測定方法は再現性の点で問題ないものと考えられた.