抄録
【目的】脳卒中片麻痺患者の立位における移動能力評価として、Timed Up&Go Test(以下TUGT)や10m歩行時間がよく用いられている。しかし、立位が不安定な片麻痺患者に対する簡便な評価方法として確立されたものは見られない。そこで、今回我々は端坐位で実施できる移動能力評価法として2m側方移動時間(以下2LMT)を考案し、その有用性について検討した。【対象】当院リハビリテーション科病棟に入院し、理学療法を施行した脳卒中片麻痺患者のうち、半側無視・痴呆などの合併症がない16例(年齢69歳±9歳、男性10名・女性6名)を対象とした。【方法】2LMTは、以下に述べる方法で測定した。対象を、高さ40cmのプラットホーム上で端坐位をとらせ、両下肢と非麻痺側上肢のみの使用にて非麻痺側方向および麻痺側方向へと、2mの距離を全速で移動させた。この移動に要した時間を2LMTとした。2LMTの有用性を検討するため、(1)2LMTと、年齢、性別、下肢Brunnstrom-stage(以下Br-stage)、非麻痺側握力、非麻痺側膝伸展筋力、重心動揺測定(総軌跡長・外周面積・単位面積軌跡長・前後左右への両足圧中心移動距離)、Functional Reach Test(以下FRT)との関連性の調査、(2)2LMTとTUGT・10m歩行時間との関連性の調査を行った。2LMTと他の項目の検定は相関係数を、2LMT とTUGT・10m歩行時間の検定には、相関係数と重回帰分析を用いた。検定の有意水準は5%未満とした。【結果】(1)2LMTと有意な相関のある項目は、性別(r=-0.734、p<0.01)、握力(r=-0.605、p<0.05)、軌跡長(r=0.601、p<0.05)、外周面積(r=0.674、p<0.01)、両足圧中心移動距離非麻痺側(r=-0.630、p<0.05)であった。(2)2LMT とTUGT・10m歩行時間との相関をみると、TUGT(r=0.846、p<0.01)、10m歩行時間(r=0.863、p<0.01)と高い相関があった。そこで、TUGTと10m歩行時間を従属変数、他の全ての因子を独立変数として重回帰分析をstepwiseで行った結果、TUGTでは2LMT・膝伸展筋力・単位面積軌跡長が有意(R=0.947、R2=0.897、p<0.01)な項目として抽出され、10m歩行時間では、外周面積・2LMT・下肢Br-stage・両足圧中心前方移動距離・握力が有意(R=0.998、R2=0.995、p<0.01)な項目であった。【考察】2m側方移動時間は、筋力やバランス能力との関連性が高く、TUGT・10m歩行時間とも高い相関が認められた。また、重回帰分析の結果、TUGT・10m歩行時間を説明する因子としても有意であり、移動能力評価法としての有用性が示唆された。この2m側方移動時間は、特別な装置も不要で、簡便に測定可能なため、立位が不安定な片麻痺患者にも使用できる臨床的な評価法であると考えられた。