抄録
【はじめに】 人工二酸化炭素泉浴は疼痛緩和や褥瘡治療、閉塞性動脈硬化症の治療等に効果があることはすでに知られているが、これらのメカニズムの一つとして局所血液循環の改善が考えられている。今回、我々は淡水浴と人工二酸化炭素泉浴の温熱刺激における下腿局所血流量に関する指標の経時的変化を超音波診断装置で測定し、両刺激における局所血流改善効果とその持続性に関して検討した。【対象と方法】 健常成人男性3名(24.3±0.6歳)を対象とし、室温を25℃で下腿を15分間40℃の人工二酸化炭素泉(三菱レーヨンエンジニアリング,Carbomedica,1000ppm,以下、炭酸泉)と淡水にそれぞれ別の日に座位にて侵漬した。各温浴後は仰臥位で安静を保ち毛布で下肢を保温した。侵漬直前、直後、30分後、1時間後に右後脛骨動脈の分時血流量(FV)、1回血流量(SV)、最大血流速(Vp)、最低血流速(Vd)、血管断面積(CSA)を超音波診断装置(日立メディコ、EUB-6500)で測定した。各測定は3回連続して行い各平均値を求めた。各温浴前の値を100として各温浴後の値を算出し、各々の変化指数として検討を加えた。【結果】 3名平均の変化指数は直後、30分後、1時間後の順で以下の様であった。FVは淡水浴で215.3、142.0、106.3、炭酸泉浴では264.3、226.2、151.9であった。SVは淡水浴で202.5、146.8、102.7、炭酸泉浴では298.5、265.2、170.3であった。Vpは淡水浴では129.2、118.2、113.9、炭酸泉浴では144.2、138.1、115.9であった。Vdは淡水浴では146.0、143.0、103.2、炭酸泉浴では284.8、250.0、158.9であった。CSAは淡水浴では116.7、108.3、94.4、炭酸泉浴では141.7、125.0、125.0であった。【考察】 本研究では、測定した全ての指標において、変化指数が淡水浴よりも炭酸泉浴が上回っていた。この現象は以下の様に解釈できる。炭酸泉浴では温熱効果に加えて二酸化炭素の経皮侵入によって血管拡張が促され、これがCSA増加と抹消血管抵抗を減少させるので、毛細血管への血液流入を増加させる。これがSVの増加をおこす。これによってVpとVdの上昇がおこり、結果としてFVがより多く増加するものと考えられる。浴水侵漬1時間後の変化指数の全てが炭酸泉浴では侵漬前よりも高値を維持しているのに対して、淡水浴では4指数でほぼ侵漬前の値に戻っているという今回の成績は、経皮的に吸収された二酸化炭素は炭酸泉浴の後も暫く生体内に留まることがあるという従来の報告によって説明できると考えられる。 本研究では超音波診断装置により局所血管をモニタで同定しつつ血流を測定することで、炭酸泉浴が淡水浴よりも高い局所血流改善効果と長い効果の持続性を有する可能性があることを示すことができた。