抄録
【目的】低出力レーザーは,鎮痛効果,創傷治癒促進効果などを目的に各臨床分野で適用されている.低出力レーザー光の照射は,非破壊的作用として生体系に何らかの刺激を与え,その機能を活性化させるという生体刺激または活性効果があるといわれている.しかしながら,その作用機序については種々の見解がある. 今回,我々はラット熱傷モデルを作製し,低出力レーザーの創傷治癒効果に対する影響を検索した.【対象と方法】対象は体重240から260gの7週齢のWistar系雄ラット8匹を用いた.エーテル麻酔下で背部を剃毛した後,出力500mWの直線偏光近赤外線を使用し,直径1cmの円形の熱傷を脊椎を中心として左右に1ヶ所ずつ作成した.熱傷作成の翌日から波長830nm,出力150mWのGa-Al-As半導体レーザー(メディレーザー150;持田製薬製)を使用し,片側にはレーザー光を照射せず(非照射側),他側にはレーザー光を照射した(照射側).レーザー光照射期間を10日間と15日間に分け,それぞれ10日群(3匹),15日群(5匹)とした.レーザー光の照射方法は,非接触法で照射時間を1ヶ所10秒間とし,照射部位を移動させて1回に6ヶ所(計1分間)施行した.レーザー光は1日1回,毎日継続して照射し,照射時間以外はゲージ内で通常飼育した.照射期間中は毎回,熱傷部皮膚の状態をチェックし,ノギスを用いて創部の直径を計測した.レーザー光照射期間終了後,エーテル深麻酔にて安楽死させ,熱傷部の皮膚を採取しReddyの方法に従いヒドロキシプロリンの含有量を計測した. 【結果】皮膚の状態をみると,日を追うに従って創が縮小することが観察され,レーザー光照射側が非照射側と比較し,より縮小していた.ヒドロキシプロリン含有量は,10日群ではレーザー光照射側が非照射側と比較し多い傾向にあった.15日群では,2匹は10日群と同様に照射側が非照射側と比較して多い傾向にあったが,3匹は照射側と非照射側の含有量に違いはみられなかった.【考察】レーザーの作用機序について種々の見解があるが,光化学作用に低出力レーザーが応用されており,低出力レーザーの生体への作用として,鎮痛・消炎,微小循環障害の改善,創傷部位におけるタンパク合成の促進,酵素活性の上昇が報告されている.今回,レーザー光照射によりヒドロキシプロリン含有量の増加傾向がみられたことから,レーザー光がコラーゲン合成を促進させることが考えられた.15日群のうち3匹においてヒドロキシプロリン含有量の増加傾向がみられなかったことについては,15日という期間が創傷治癒過程の第3相にあたり,この時期のヒドロキシプロリン含有量は治癒状態により違いがみられる可能性があると考える. 今後,治癒過程の各相でヒドロキシプロリン含有量を経時的に計測し,組織学的変化についても検討する必要がある.