抄録
【はじめに】超音波(以下US)の生理的作用には温熱効果と非温熱効果があるとされており、臨床的効果の1つとして筋・腱の伸張性改善があると言われている。 今回我々は筋・腱の持続的伸張と持続的伸張にUS照射を加えた場合の効果を比較した。【対象と方法】下肢に既往のない健常人31名の腓腹筋を対象とした。内訳は男性8人で平均年齢は24±4歳。女性23名で平均年齢は20±1歳である。 起立矯正台による腓腹筋の持続的伸張を行いながらUS照射を加え、施行前後の足関節の自動背屈角度と伸張痛を検査した。また、自重による持続的伸張のみを施行したものを対照群とした。伸張痛の評価方法は、全く伸張痛のない場合を0、耐え難い伸張痛がある場合を10とし、11段階で回答を得た。 起立矯正台は左右で個別使用とし、その下に体重計を設置、荷重が左右均等になることを確認した。背屈矯正角度を20度、下腿肢位は中間位とし、施行時間は5分間とした。US治療器は伊藤超短波社製US-700を使用。US照射部位は、下腿の最も伸張痛のある部位とした。照射条件は3MHz、強度1W/cm2、照射面積は導子の約2倍で、連続照射の移動法で行った。【結果】実施前後における角度変化は全体平均で、US群は15.5度から19.8度、対照群が15.6度から17.5度であり、両者ともに実施前後で有意差を認め(P<0.01)、US群の方が角度変化が大きかった。伸張痛の変化については全体平均で、US群は5.3から3.1、対照群は5.5から4.6であり、両者ともに実施前後で有意差を認めた(P<0.01)。しかし、US群の方が伸張痛が軽減する傾向が強く、ほとんど伸張痛を訴えない者もいた。【考察】施行前後における足関節の角度変化については、対照群での持続的伸張は腓腹筋のゴルジ腱器官を刺激し、Ib線維を介して腓腹筋の筋緊張が抑制され、足関節背屈角度が増大したと思われる。さらに、持続的伸張が腓腹筋を伸張するに伴ってIa、II線維の自発性放電が順応により低頻度となったことも腓腹筋の筋緊張低下につながったと思われる。これに対し、US照射群の方が角度変化が大きかった理由としては持続的伸張効果にUS照射による効果が加わったためと考えられる。US効果には温熱効果と非温熱効果がある。臨床的効果としては両者とも、筋肉や腱の伸展性の増大、筋腱等の軟部組織の粘弾性の低下などが言われており、これらが持続的伸張効果と加わって、さらにUS群の角度の増大をもたらしたものと推測される。伸張痛についてはUS照射により、筋の粘弾性が低下し腓腹筋の伸張痛が減少したと推測される。 今回の結果より、持続的伸張のみによる方法よりも、持続的伸張にUS照射を加えたほうが、より効果的であると思われた。