抄録
【はじめに】 健常者は座位保持が長時間に及ぶと自由に姿勢を変える事で、座位を継続する事ができる。しかし、股・膝関節の疾患による可動域制限がある場合、椅子に座ることが可能であっても、長時間の座位保持は困難なことが多い。そこで今回、障害の程度に合わせて加工を施したクッションを高さ調整等を行った椅子に取り付け、座位時間の延長を図ることができた症例を経験したので報告する。 【対象及び方法】 対象は当苑通所リハビリテーション利用者の83歳男性とした。診断名は脊椎カリエス(左股関節屈曲0°_から_20°、左膝関節屈曲10°_から_30°)であった。苑内の椅子では高さ調節機能がないため、座位姿勢は仙骨座りとなり、腰への負担を伴い、長時間の座位保持や立ち上がりが困難であった。そこで苑内の椅子に6cmの補高を施行した結果、立ち上がりは容易になったが、殿部の前方への滑りが頻繁にあり、依然、長時間の座位保持は困難であった。そのため、症例の最も座り心地が良い座面高や肘掛けの高さを考慮した椅子を作製した上、クッションについては、ウレタンフォームを5種類使用し、種類と比重によって沈み方に特徴があるため、その特徴を補完しあうように組み合わせた。具体的には、表層部のクッションは沈みやすく柔らかな感触を作る低反発ウレタンの上に、通気性ウレタンと接触面積や沈み込みが大きくなることを防ぐための普通ウレタンを用いた。深層部のクッションは、しっかりと負荷を受け止めることができる高弾性ウレタンを用いた。また前方への滑りを抑制するため、前方部の厚みを大きくした。そして、これらの効果を検証するために、座面・背面にかかる圧力分布をニッタ製座圧分布測定システム (BIG_-_MAT)を用いて測定し、苑内の椅子の座圧・背圧測定結果と比較検討した。 【結果及び考察】 苑内の椅子に比べ今回作製した椅子・クッションの座圧・背圧測定結果では左坐骨部や右肩甲骨付近の高負荷の接触面積は減少し、ピーク圧力も分散された。また、この椅子・クッションを利用することにより、_丸1_仙骨座りからの殿部の前方への滑りが減少した、_丸2_滑りが減少した事で姿勢を直す回数が減った、_丸3_肘掛けがあるために姿勢を直す事や立ち上がりが容易になった、_丸4_連続2時間程度の座位保持が可能となった、_丸5_座ることに対しての負担(腰痛等)が減った、等の改善が認められた。 工夫した椅子・クッションを利用することで、ある程度の効果が認められたが、これは個人の障害の程度に合わせたものを作るために利用者が限定される等の問題がある。さらに個々の対象者に十分対応していくには主観的・客観的評価を十分行った後、使用段階で問題が生じれば、その都度対応する他、定期的なチェックも必要である。