抄録
【はじめに】住宅改修を退院前訪問指導で行った結果、在宅生活内での移動手段が車椅子群より歩行群に浴室の改修率が有意に高かった(第37回本大会・大垣)。そこで今回、設置された場所で手摺りの使用状況を追跡調査し、若干の知見を得たので報告する。【対象および方法】平成8年4月_から_平成14年8月までの間、当院にて行われた退院前訪問指導の193名を対象とした。在宅生活での移動手段が車椅子の者をA群、移動手段が杖や歩行器による歩行者をB群に分けた。住宅改修に関する質問紙調査は25設問よりなる。今回両群に対してこの内、玄関、廊下、トイレ、浴室の場所別に手摺りの使用状況を「a:問題なく使用している、b:設置したが使いにくい、c:再改修した、d:使用していない」の4項目を設問とし、郵送による調査を実施した。【結果】有効回答数104名(54%)、平均年齢65.6±12.0歳、男性64名、女性40名。A群39名、B群65名であった。手摺りの使用状況では、A群は玄関でa:69.6%、b:8.7%、c:4.3%、d:17.4%。廊下でa:57.1%、b:7.1%、c:0%、d:35.7%。トイレでa:75.8%、b:3.0%、c:3.0%、d:18.2%。浴室でa:44.4%、b:5.6%、c:11.1%、d:38.9%であった。B群は玄関でa:85.1%、b:6.4%、c:6.4%、d:2.1%。廊下でa:93.8%、b:0%、c:3.1%、d:3.1%。トイレでa:87.9%、b:3.4%、c:5.2%、d:3.4%。浴室でa:75.9%、b:0%、c:10.3%、d:13.8%であった。使用状況で何らかの問題があるのは、A群で、浴室55.6%、廊下42.9%、玄関30.4%、トイレ24.2%であった。B群で、浴室24.1%、玄関14.9%、トイレ12.1%、廊下6.3%、であった。手摺りの使用状況で何らかの問題があるのは廊下、浴室においてA群が有意に高かった(P<0.05)。玄関、トイレにおいては有意な差は見られなかった。【考察】手摺りの設置に関しては、在宅生活後に、移動手段に関わらず少なからず問題が生じることが今回の追跡調査から明らかとなった。特に車椅子使用者では廊下、浴室において経過とともに使用に対して問題が発生することが分かった。このことは、居宅内車椅子使用者は、車椅子を移動させる廊下のスペースの確保と浴室内での移動の仕方等を重点的に指導することの必要性が示唆された。特に浴室は改修頻度が高い箇所ではあるが、本人の身体機能のみだけでなく、家人の要望、介助者などの事も考慮して、手摺り設置の必要性を十分に検討しなければならない。 退院前訪問指導は、そのときの状況のみで検討するのではなく、退院後を見通した計画を考えながら検討することが必要であり、それらの点にも言及して、患者・家族が納得するような説明・指導が重要である。今後は、退院前訪問指導に加えて、指導内容および改修した手摺り等の設置場所と使用状況に関する定期的な訪問調査により、改善策を図る必要性が示唆された。