理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BP213
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運動・神経生理
関節拘縮と廃用性筋萎縮の予防としての短時間持続伸張の影響
*西田 まどか鍬塚 幸子岡本 眞須美沖田 実中野 治郎吉田 大輔荒木 景子吉村 俊朗
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抄録
【目的】 四肢の骨折後や靱帯損傷後においては、患部の安静や治癒促進などを目的にしばしばギプス・装具などによる関節固定が行われる。しかしその反面、関節固定は拘縮の発生を招き、加えて、筋の不活動も助長されるため廃用性筋萎縮が併発する。したがって、これらの二次的障害を予防するためには、可能な限り頻繁に固定を解除し、伸張運動などによって関節可動域を確保しつつ、筋に機械的刺激を入力することが重要と思われる。そこで本研究では、ラット足関節のギプス固定の過程で30分という短時間の持続伸張を行うことで、拘縮と筋萎縮の予防が可能かどうかを検討した。【材料と方法】 8週齢のWistar系雄ラット29匹を、対照群(C群:n=10)と実験群(n=19)に振り分け、実験群は両側足関節を最大底屈位の状態でギプス固定した。実験群の内10匹は固定のみとし(I群)、残り9匹は毎日ギプスを外し、1日30分間、麻酔下で両側足関節の持続伸張を実施した(PS群)。そして固定2週後(C群:n=5、I群:n=5、PS群:n=5)、4週後(C群:n=5、I群:n=5、PS群:n=4)に麻酔下で両側足関節の背屈角度を測定し、ヒラメ筋と足底筋を摘出した。摘出した筋は急速凍結させ、その連続横断切片をH&E染色、ATPase染色(pH4.2、4.5、10.5)した。そして、ヒラメ筋はタイプI・II線維に、足底筋はタイプI・IIA・IIB線維に分別し、各々の筋線維直径を計測した。【結果】 足関節背屈角度は固定2、4週後ともC群に比べI群、PS群は有意に減少しており、特にI群の減少が著しかった。また、ヒラメ筋のタイプI・IIの平均筋線維直径は、固定2、4週後とも、C群に比べI群、 PS群は有意に減少しており、I群とPS群に有意差は認められなかった。一方、足底筋のタイプI・IIA・IIB線維の平均筋線維直径は、固定2、4週後とも、C群に比べI群、PS群は有意に減少しており、固定2週後では、I群とPS群に有意差は認められなかった。しかし、固定4週後ではI群に比べPS群が有意に大きかった。【考察】 今回の結果から、固定2、4週後とも足関節背屈角度の減少はI群よりもPS群が軽度であり、このことから、短時間の持続伸張による拘縮の進行抑制効果が認められた。しかし、筋線維萎縮の進行抑制効果は、固定2週後ではヒラメ筋、足底筋ともに認められず、固定4週後では足底筋のみに認められた。したがって、ギプス固定中に30分という短時間の持続伸張を行っても筋線維萎縮の予防は難しく、今後は実施時間や他の運動方法を検討する必要があると思われる。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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