抄録
はじめに 病院、施設を離れ、利用者の自宅で理学療法サービスを実施するにあたっては、リスク管理が重要である。今回、拡張型心筋症という循環器系のハイリスクの合併症を有するケースの訪問リハビリテーションを実施するにあたって、主治医との円滑なコミュニケーションによって、循環器系のリスク管理のもと一定の効果を上げ得た症例を経験したので報告する。症例 73歳男性、61歳時に拡張型心筋症の診断を受け、その後は循環器内科で外来通院のもとフォローされていた。69歳時に脳梗塞を発症し左片麻痺となった。屋外杖歩行可能なレベルで自宅復帰した。72歳時、転倒し左上腕骨骨折、介護認定を受け要介護3でデイケアの利用を開始した。2002年10月23日、73歳時、デイケア利用中に転倒し左大腿骨転子下骨折受傷し整形外科に入院、骨接合術施行。術後1週後から理学療法開始となったが、立位歩行訓練の段階で起立性低血圧を生じ、受傷前のADLを獲得しないまま、本人の希望もあり12月25日自宅退院した。問題点および経過 整形外科からの依頼により12月27日に初回訪問を行った。退院後の申請で要介護4の認定。問題点は起立性低血圧により立位歩行訓練施行が困難なことであった。上記の問題から車イスレベルがゴールとして設定されていたが、居宅がエレベーターのないマンション4階のため、通院を含む外出には階段昇降の獲得が必須であった。 そこで循環器内科主治医にPT評価とゴールを連絡し、心機能と運動負荷に伴うリスクを照会した。安静時心機能は_%_左室径短縮率が26_%_、心不全の重症度を示す血漿B型ナトリウム利尿ポリペプチド濃度は143pg/mlと比較的良好で、66歳時の運動負荷試験では最高運動耐容能は6METsと比較的高い値を維持していた。主治医からは、血圧低下に伴う自覚症状を指標に運動負荷訓練が可能という判断であった。 これを受けて週1回の訪問PTを開始した。立位保持、屋内歩行、階段昇降と運動負荷を拡大し、2002年5月には、近位監視での階段昇降を獲得した。経過中に起立性低血圧の増悪や心不全徴候は見られなかった。考察 在宅PTで最も困惑するのは、利用者が有する複雑多岐な疾病背景に対するリスク管理である。理学療法士が利用者の家庭を訪問し十分なサービスを提供するためには、主治医との円滑なコミュニケーションが重要である。今回のケースでは循環器内科医より十分な情報を得たため表記の能力回復を得た。積極的な情報収集が重要である。