抄録
【はじめに】機能の低下した高齢者は集中力の低下や疲労などにより長時間の運動実施が困難である。そのような高齢者に対し安定した運動姿勢として座位を選択し、もぐら叩き機を利用して実施することで能動的・集中的に運動が行えるのではと考えた。集中力の途切れ易い高齢者に対しもぐら叩きというゲーム機のエンターテイメント性に着目し反復動作(運動持続)を行わせ高齢者の反応速度にどのような変化が見られるか検討したので報告する。【対象・方法】対象者は、介護老人保健施設(以下老健)に入所又は通所している後期高齢者27名(男性6名,女性21名,平均80.6±5.5歳)である。機能的動作尺度マニュアル・落下棒テスト・もぐら叩きのスコア・握力・寝返り・起き上がり・立ち上がり動作に要する時間・HDS-R等14項目に渡り評価・測定を行った。期間は、H14.5からH14.10まで行い、トレーニングは2ヶ月間実施し、1ヶ月間休止を1クールとし2クール実施した。評価、測定は全て理学療法士が行った.【結果】トレーニングを実施した2ヶ月間は1・2クール伴に個々のデータは向上値を示し、モグラ叩きのスコアは上がった。また落下棒テストと握力で相関がみられ、有意差が認められた。しかし、トレーニングを休止した1ヶ月間は1・2クールとも個々のデータは、低下傾向を示す結果となった。また、この時の機能動作尺度的な変化はなかった。【考察】今回の研究結果から落下棒テスト・スコア・握力などの向上が認められた。これら結果の素因として、1:落下棒テストともぐら叩きの動作姿勢の類似している、2:今回の反復動作ではハンマーを握り実施した為、棒を握る動作(握力)の向上につながった、3:出てきたモグラを叩くという能動的な反復動作より、落ちる棒への反応が早くなった、4:もぐら叩き機のエンターテイメント性を利用した事で反復動作への集中力の持続が可能となり、スコアの向上につながったと考える。今回はABAB法にてトレーニングを実施し検証を試みたが、2ヶ月間(×2クール)の方が実施していなかった1ヵ月間(×2クール)に比べ、高齢者の反応速度が上昇した事が認められた。トレーニング開始時から見て、終了時には全体的に落下棒テスト・握力・スコアの向上が見られた事から、今回の対象者が老健入所・通所中の後期高齢者であったのに対し、健常高齢者に実施した場合、更なる反応速度向上の可能性が期待される。今後の課題として、反応速度の向上が高齢者の生活面で転倒予防など、今後いっそうの高騰をしめすであろう医療費の抑制についてどうの様な影響を及ぼすか、またどの様な利点があるのかについて研究を重ね、検討していく事が必要だと考えた。