抄録
【はじめに】運動機能の低下している後期高齢者の機能・健康問題は,疾病に起因するものより「活動性の低下」そのものによる影響が大きい。特に集中的な医学的ケアを必要としていない高齢者は、活動性を上げ運動習慣を獲得すれば健康の維持・改善を図ることが出来る。しかし、痴呆などを合併し集中力の低下がある後期高齢者に対し運動習慣を生じさせる動作の反復や,継続方法には難渋する場合が多い。今回我々は、ゲーム機の持つアミューズメント性に着目し運動を実施、評価・測定しその効果について検討したので報告する。【対象】介護老人保健施設(以下老健)に入所及び通所し重篤な合併症を有していない後期高齢者のうち、H14.5月から10月までの6ヶ月間週3回の実施が可能で毎月の評価が実施できた14名(女性10名,男性4名、平均年齢80.3歳)。改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS‐R)は平均18.2±4.1点(MEAN±SD)。【方法】対抗もぐら2(YUBIS社製)の前に各人の両足底接地する椅子を用意し、利き手にて1回50秒の時間設定で60秒の休息を置き4回反復させた。評価はモグラ叩き得点、ファンクショナルリーチ(以下FRT)、上肢・体幹の関節可動域(以下ROM;日大式電子ゴニオメーターで計測)、握力、落下棒テスト(以下SFT)、寝返り・起き上がり速度など14項目を測定した。トレーニングは、2ヶ月実施、1ヶ月休止というスパンを1クールとし2クール行った。毎月評価を実施し、統計学的検討にはt検定を用いた。【結果】運動開始後2ヶ月間は、もぐら叩き得点(p<0.001)・FRT(p<0.01)・SFT(p<0.001)・握力・立ち上がり速度は上昇を示した。機能動作尺度・ROM・片脚立位・10m歩行・寝返り・起き上がり速度、HDS‐Rに変化は見られなかった。運動休止期間中は、先に上昇を示したパラメータに低下が見られた。2クール目に入り運動を再開すると上昇が見られた5項目には再び改善傾向が現れ、休止すると低下が見られた。モグラ叩きを実施する際に直接的に関係する機能及び重心の前方移動能力は上昇することが示唆された。【考察】本研究の目的はゲーム機の持つアミューズメント性を利用して、後期高齢者に運動習慣を獲得させることが可能か、効果が上がるのかを検証することにあった。運動習慣と呼べるものはつかなかったが、2ヶ月間に渡り同じ動作を反復させることが可能であったのは、動作を行っている最中にその結果を得点としてリアルタイムに確認できたこと、ゲーム機のギミックや音、光などが声かけ、励ましと同様な刺激として、動作とともに同時入力されたことで、純粋に楽しいと感じられ「快」の感覚を得ることができたことによるのではないかと考える。また、各スコアの経時的変化から運動による効果であることが示唆された。