抄録
【はじめに】介護老人保健施設(以下老健)でリハビリテーション(以下リハ)を行うにあたり最も苦心している点は、痴呆利用者への効率的なリハ(継続性も含む)の実施が困難であることと、スタッフの人員的問題によるリハ量の不足である。今回当施設に「モグラ叩き機(対抗もぐら2:YUBIS社製)」を導入し、アミューズメント性を有するゲーム機を使用したリハを実施することが、上記の点に対しどの程度有用であったかを、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS‐R)を指標とした痴呆程度による利用者間の身体機能変化の差違を評価し、検討したので報告する。【対象】対象はデータ収集開始時と、終了時ともに評価が実施できた本施設の入所・通所(男6名女21名)利用者27名、平均年齢80.6±5.5歳で、HDS‐Rの平均値は20.2±7.0点である。【方法】期間は平成14年5月から10月の6ヵ月間。利用者をHDS‐Rの値により3群(12以下、13以上20以下、21以上)、さらに理学療法士(以下PT)がマンツーマンで実施した群(PT介入度大)と、実施場所までの誘導のみで本人に任せて行った群(PT介入度小)とに分け、1回につき4ゲームを通所者は週1から3回、入所者は週3回おこなった。今回はHDS‐R、モグラ叩き得点、リーチ動作、握力、ROM(日大式電子ゴニオメーター)片脚立位等、14項目の評価を月毎6回おこない、利用者の経時的変化と各群間の差違を検討した。【結果】27名中HDS‐R20以下・PT介入度小の2群を除く4群の評価項目に有意な改善が認められた。HDS‐R20以下・PT介入度小の群はモグラ叩き得点、リーチ動作、ROM、片脚立位、10m歩行の各項目に有意な改善が認められなかった。【考察】今回の結果から、HDS‐R21以上の利用者は両群共身体機能維持・向上に効果があったことが示唆され、単独での効率的なリハとなるだけでなく、個別リハとの併用によりリハ量の不足を補うために有用な方法であり、一層の効果が期待できると推測される。また継続性の面からも楽しみながらおこなえる運動として、健常高齢者を対象とすることで予防医学の観点からも新たな身体機能へのアプローチ法として将来性が感じられる。しかし目的や効果を理解することが難しい痴呆利用者に対し、ただ漠然と実施させても、効率的なリハとなりにくいことも同時に示唆され、このことから痴呆利用者にとって療法士が介入しない限り、身体機能面のみで評価した場合に、療法士による個別リハの代替手段としては、現時点では充分とは言えない。痴呆利用者を対象とするには、従来の個別リハ同様療法士への依存度が高く、リハ量の不足を補うことにはつながりにくいため、他職種との連携や今後の研究が必要である。