抄録
【はじめに】高齢者に対する高負荷筋力トレーニング、機能的トレーニングを特徴とした包括的運動トレーニング(Comprehensive Geriatric Training, CGT)が筋力や体力諸要素、健康関連QOLの改善に有効であるということは、すでに報告されている。しかし、CGT後1年経過した対象者の主観的健康観、行動の変化などについては調べられていない。
【目的】3ヶ月間のCGTに参加した65歳以上の対象者の1年後の健康関連QOL、生活機能の変化、主観的幸福感、行動の変化について調査する。
【対象および方法】1年前にCGTに参加した地域在住高齢者23名(男2名、女21名、平均年齢74±5才)に対して健康関連QOL のMOS 36-Item Short-Form Health Survey(以下SF-36)と生活機能の指標である老研式活動能力指標について評価を行い、介入前後と比較した。また、主観的幸福感の尺度であるPhiladelphia Geriatric Center Moral Scale(以下PGCモラールスケール)と、日常生活に関するアンケートに回答を得て、現在の生活の様子や新しいことを始めたかどうかなどの日常生活行動に関する事項を聴取した。
【結果】1年後に筋力トレーニングを継続していたのは23名中2名であった。SF-36について介入前後と1年後でFriedman検定を行ったところ、Physical Functioning(P<.05)、General Health(P<.01)、Vitality(P<.05)Mental Health(P<.01)で有意差が認められた。老研式活動能力指標は介入前と1年後では有意差が認められた(P<.05)。PGCモラールスケールでは健康・老いに対する情緒安定で低得点の傾向が認められた。また23名中17人(74%)が新しいことを始めており二項分布(両側検定)により危険率は5%であった。これは今後対象者が増えることで有意差が認められる可能性があると思われる。
【まとめ】介入1年後に高負荷筋力トレーニングを続けている者は少数であり、健康関連QOLと生活機能の指標は有意に低下していた。また、主観的幸福感は老いや健康について低い傾向が認められた。しかし、運動をきっかけに新しいことを始めた例が多く、高負荷筋力トレーニングをきっかけに行動の変化を導く可能性があると考えられる。これらのことから主観的健康観を維持するためには、運動を継続するための方策と介入後のフォローアップ体制づくりが必要であると考えられる。