理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PP170
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地域リハビリテーション
介護老人保健施設での歩行器使用について
*井出 智子安達 宏江豊田 孝明中野 友貴
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抄録
【はじめに】介護老人保健施設(以下老健)では安全で使いやすい歩行補助具の選択がPTに求められている。当老健では床を滑らせるタイプの歩行器を多用している。歩行器の使用状況を調査し報告する。【当老健で使用している歩行器】1.四脚型歩行器 2.前方車輸付き歩行器 3.すべる歩行器(四脚型歩行器の脚部にニチアス株式会社のカグスベールを取り付けたもの)【調査方法】2002年11月8日に入所していた85名全員に対し、一日断面調査を行い、実用的移動手段、自立歩行者の使用している歩行補助具の種類について調べた。また、歩行器使用者について診断名、痴呆の有無について調べた。【結果】実用的移動手段についての調査では、入所者85名中、歩行自立していた者は27名(32%)、車椅子自立15名(17%)、車椅子介助38名(45%)、ストレッチャー使用者5名(6%)であった。歩行自立していた27名の歩行補助具の内訳は独歩8名(29%)、T字杖3名(11%)、4脚杖0名(0%)、四脚型歩行器0名(0%)、前方車輪付き歩行器4名(15%)、すべる歩行器11名(41%)、シルバーカー1名(4%)であった。歩行器使用者の障害像は、前方車輪付き歩行器の4名では脳血管障害2名、大腿骨頚部骨折2名で、痴呆は有りが2名、なしが2名であった。すべる歩行器の11名では脳血管障害7名、腰堆圧迫骨折2名、変形性腰椎症1名、頚稚症1名で、痴呆は有りが10名、なしが1名であった。【考察】今回の調査では歩行自立者の56%が歩行器を使用していた。その多くがすべる歩行器であった。すべる歩行器を多用するに到った理由は、1.絶えず床に接地した状態なためバランスを崩しにくく免荷機能もある。2.方向転換等の操作がしやすい。3.他の歩行器と比べて音がしない。などが考えられる。歩行器使用者15名中12名は痴呆を有していた。これは床を滑らせるタイブの歩行器が独歩と同じ2動作歩行のため、歩行補助具に合わせて新たな歩行パターンを学習しなくてよいからと考える。すべる歩行器を使用するにあたっては、1.底部が唐耗すると滑りにくくなり定期的なチェック、交換が必要になる。2.四脚型歩行器のメーカーによっては振動が出て適さないものがある。3.土挨などで床面が汚れていると滑りにくいことがある。以上の点に配慮している。【まとめ】バランス障害や易疲労性、痛みや痴呆のある高齢者に対し、広く段差のない施設の中ですべる歩行器の使用は有効である。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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