理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BP216
会議情報

運動・神経生理
一側最大下筋力発揮時における両側筋力発揮の特性
対側の最大筋力の変化に着目して
*竹林 秀晃宮本 謙三宅間 豊井上 佳和宮本 祥子岡部 孝生
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】両側同時の筋力発揮は,片側のみの筋力発揮より低下する現象は両側性機能低下bilateral deficitとして知られている。過去の報告では,両側の最大筋力発揮での研究報告が多く,一側最大下筋力発揮中の対側最大筋力発揮における運動課題でのbilateral deficitに関する報告は少ない。今回の研究の目的は,両側性運動において一側最大下筋力発揮の調節を行っている際の対側最大筋力レベルの変化を明確にすることである。【方法】対象は,健常成人9名(男性3名,女性6名)で身長162.6±7.6cm,体重57.3±9.4kg,年齢23.1±2.1歳であった。測定肢位は,両側膝関節90度屈曲での膝伸展等尺性収縮とした。方法は,右膝伸展は,Cybex770-NORMにて右側の最大筋力を計測し,その最大筋力の25%・50%・75%の筋力調節をモニタで一定値を保つように確認をさせながら,左膝伸展の最大筋力発揮を行わせた。また,両側同時の最大筋力発揮も行ない,各施行を2回ずつをランダムに行った。左側の最大筋出力は日本メディクス社製power trackにて計測した。右側の筋出力調節を行っている際の左側の最大筋出力レベルの変化をみるために左一側性最大筋力を100%として正規化した。統計学的分析は,一元配置分散分析とTukeyの多重比較法を用いて検討した。【結果】右側の筋力調節を行っている際の左膝伸展の最大筋力は,それぞれ25%筋力発揮時では69.4±16.5%,50%筋力発揮時では77.2±14.1%,75%筋力発揮時では79.2±14.0%,両側最大筋力発揮時では81.6±13.2%,左一側最大筋力発揮時,100%であった。左一側最大筋力時と比較して両側運動時の全てのレベルの最大筋力の値で有意な低下が認められた(p<.001)。さらに各筋力発揮の調節レベルの変化による影響は,25%時と50%時,25%と75%時で25%筋力発揮時の左膝伸展の最大筋力の有意な低下が認められた(p<.001)。【考察】Bilateral deficitのメカニズムはいくつか提唱されているが,今回はその中の意識の分割という心理的要素に着目して行った。右側筋力発揮レベルが低いほど左最大筋力の低下の度合いが著しいことは,同調的低下現象でありassimilation effect(Sherwood,1990)と捉えることができる。 また,この最大筋出力の低下現象は,左右肢間妨害作用interlimb inferferenceと捉えることができ,課題遂行のために機能的に協同筋と考えられる筋間においてあたかも遠心性指令が相互に抑制を及ぼしあうように見えることから遠心性協同筋抑制といわれている。このことは視覚などでみられる周辺抑制surround inhibitionと相似と考えられ,筋出力を感覚器として捉えるならば運動系のコントラストを高めるメカニズムに由来するものとして理解できる。本研究の結果は,筋感覚・筋力トレーニングを行う際の重要な要素であると考える。
著者関連情報
© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top