理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BP215
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運動・神経生理
第一背側骨間筋における運動による遅発性筋痛の軽減について
*窪川 徹
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抄録
<目的>不慣れな運動や激しい運動を行った後に、筋肉痛を感じることは日常的によく経験する事である。このような筋痛は遅発性筋痛と呼ばれる。遅発性筋痛の原因として、様々な説が提唱されているが、不明な点も多い。一方このような、遅発性筋痛を軽減または予防する方法で、運動による筋痛の軽減法としては、徐々に強い負荷をかけていくようにすることや、あらかじめ筋痛を発現させておくことが有効であるとされる。そこで今回、運動による筋痛の軽減する方法を用い、第一背側骨間筋のエキセントリック運動を行った同一被験者に4週間期間を開けて、十分に筋が回復した状態でもう一度第一背側骨格筋のエキセントリック運動を実施した。以上の実験を疼痛指標としてVASによる疼痛の半定量化をし、最大随意筋力の低下ならびに回復、筋損傷の指標として血中CK、炎症指標として血中IL-6の各々のパラメーターの経時的な変化を比較検証した。<対象と方法>被験者は、右利きの健常男子学生8名。椅子坐位にて肘屈曲90度で手掌面を測定台の上にのせ、第二指以外は動かないよう固定し、第二指の外転最大筋力を引張圧縮両用小型ロードセルにて1秒間測定の後、内転方向にリールを用いて引き戻した。この過程を10秒間に1回の割合で100回施行し、4週間後再び同様の運動を施行した。遅発性筋痛はVASを用い、何もしない時の痛みを自発痛、指を動かしたときの痛みを動作時痛、第一背側骨間筋を指で押した時の痛みを圧痛としてそれぞれ運動前から運動直後、3、6、12時間後、1、2、3、4日後、1週間後、2週間後まで評価した。最大発揮筋力は運動前、運動直後から2週間後まで回復過程を追った。採血は非運動側である左橈骨皮静脈から約10mlずつ行い、採血時間は疼痛の評価と同じとした。IL-6、CKは吸光計により吸光度を血清濃度に換算した。<結果と考察>遅発性筋痛:1回目、2回目とも自発痛を訴えた者はいなかった。動作時痛、圧痛は1回目は運動前に対し、運動2日後に有意に上昇した。2回目は動作時痛は有意な上昇は示さず、圧痛が運動2日後に有意に上昇した。最大随意筋力:1回目は運動前に対し運動直後、1、2、3、4日、1週後に有意な低下を示した。2回目は運動前に対し運動直後、1、2、3日後に有意な低下を示した。血清CK活性変化比:1回目は運動3日後に有意に上昇していた。2回目に有意な上昇は見られなかった。血清IL-6濃度:1回目は運動前に対し、運動12時間後に有意に上昇していた。2回目は有意な上昇は見られなかった。2回目の運動により、圧痛は軽減されなかったが動作時痛は軽減された。また筋力低下が減少し、筋力回復が大きく、CK、IL-6の有意な上昇を示さなかったことから、1回目のトレーニング効果により、筋損傷や炎症も少なく、生じた浮腫の程度が小さかったと推察される。よって運動による遅発性筋痛の軽減は、筋の損傷や炎症を抑制し筋膜の受容器刺激を軽減している可能性が示唆された。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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