抄録
【はじめに】近年のバリアフリー化に伴い、車椅子用トイレの設置を多く見かけるようになった。年齢や障害に関わらず外出時にもトイレの利用性は高く、後の外出意欲にも大きく影響するものである。しかし「車椅子お散歩マップ(車椅子を中心とした観光地図)」の作成にあたり、実際に車椅子用トイレが利用されているのか、利用しやすいのかと疑問に思った。今回、車椅子用トイレに関する意識調査を行ったので考察を加えて報告する。【対象及び方法】対象は、理学療法士・作業療法士(以下PT・OT、A群)、建築関係者(以下B群)、一般(以下C群)とした。調査内容は、車椅子利用者との外出経験の有無や車椅子用トイレの利用について、及び車椅子用トイレ利用者のイメージ等に関する5項目。【結果】回答数は、A群129、B群32、C群89。_丸1_「車椅子利用者との外出経験がない」方がA群18%に対し、B群78%、C群64%。_丸2_「車椅子用トイレを利用した事がない」方はA群5%、B群38%、C群46%。_丸3_「車椅子用トイレは実際に利用されていると思うか」では、「いいえ」はA群17%、B群19%、C群12%。その理由として、「利用している場面を実際に見たことがない」が最も多く、その他「衛生・管理面の不備」「トイレまでの移動の不便さ」等が挙げられた。_丸4_「車椅子用トイレに必要なもの」はA群・B群・C群とも広さ・手すりが約30%、昇降機・自動ドアが約15%。_丸5_「車椅子用トイレを利用する方のイメージ」はA群では半身不随・身体不自由・高齢者。B群・C群は身体不自由・半身不随・身体欠損。【考察】アンケートの結果より、「車椅子利用者との外出経験がない」と答えた方が建築関係や一般において約7割を占めていた。これは日常生活において車椅子利用者との関わりが少ない事を窺わせた。「車椅子用トイレを利用する方のイメージ」では、車椅子利用者と関わる機会の多いPT・OTと、関わりの少ない建築関係や一般の方との間で大きな差はなく、全般的には「身体の不自由な方」と解釈されていると思われた。又「高齢者」に対しては、全ての群が15%程度の利用者イメージしかもっておらず、その意識にも違いはないものと考えられた。車椅子用トイレに必要なものについても、各群に共通して広さや手すりが挙げられている。しかし、実際に一緒に外出の機会が少ないこと等を考えるとイメージの上だけ捉えられているのではないかという事が懸念される。 これらの事から、ハートビル法等の施行に伴い建築物等のバリアフリーに関する情報が多く世間一般に広まっていると考えられる。また一方では、車椅子用トイレが実際に利用されていないと答えた意見の中から、継続した管理の不備,利用者からの意見を基にしたフィードバック機構がないことが一部に指摘できるものと考えられる。今後、医療・建築の各専門分野が車椅子利用者とともに、よりよい街づくりを考えていく事が必要である。