理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: PP262
会議情報

地域リハビリテーション
理学療法士の視点
障害を持った方のための観光マップ作りから
*高松 尚美伊良皆 哲也久高 将臣大屋 隆末吉 聖子新垣 栄子知名 隆平川 あずさ伊良波 知子溝田 康司
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抄録
【はじめに】近年、バリアフリーの概念が広がるに連れ様々な団体から障害を持った方々の為の観光マップ作りがなされている。我々理学療法士が身体機能を扱うという専門性を活かし、車椅子利用者を中心とした障害者用世界遺産観光マップ作りを検討した。その調査の中で得た理学療法士の視点について考察を加えて報告する。【方法】理学療法士(以下PT)8名により、観光地および公共施設におけるトイレ89箇所について以下の4項目を調査した。(1)手すりの高さ、(2)手すりの太さ、(3)トイレの出入り口幅、(4)便座の高さ。これらについて見た目の判断(以下、見た目)で、1.適正である、2.過剰不適正である(高すぎる等)、3.過少不適正である(低すぎる等)の3段階に分け、実測値を計測。この結果をハートビル法(以下HB法)の基準と比較検討を行った。【結果】(1)手すりの高さ(HB法650から700mm)は、高い3%(実測平均818mm)、低い12%(731mm)、ちょうどよい83%(711mm)であった。(2)手すりの太さ(HB法φ32から45mm)は、掴まえ易い95%(実測平均388mm)掴まえ難い4%(37mm)であった。(3)トイレの出入り口幅(HB法800mm以上)は、広い92%(実測平均944mm)、狭い7%(618mm)であった。(4)便器の高さ(HB法400から450mm)は、高い66%(実測平均420mm)、低い13%(409mm)、気にならない20%(450mm)であった。【考察】手すりの高さの不適正さは、「低い」が多かった。トイレの手すりは、立ち座りなど上下方向への重心移動を補助する役割が重視されていると考えられる。この身体の移動に関わる重心の移動に対する考え方が、HB法とは異なる見た目と数値を示すものと考えられる。 トイレの出入り口幅については、「広い」との意見が多かった。PTの視点には自力で行う移動が強く反映されていると考えられる。前後方向への直線型移動ではHB法で規定する800mmあれば移動は可能であるため、介助者のスペースについては考慮されていないと考えられる。 便座の高さについては、「高い」との意見が多かったが、実測平均値でみると「気にならない」と答えた便座高の方が高い数値となった。これは便座が車椅子よりも低いものが多く、全介助も含めて考慮するとある程度の高さである450mm程度のものが適度な高さと感じると思われる。しかし、立ち座り動作を行う際に自力、介助を問わず足底が床に接地することを前提に動作を考えると「高い」との意見が多くなったとも考えられる。 バリアフリーという概念から最近の施設は、一定の基準で整備されているが、それらが必ずしも障害を持った方々に適しているとは思い難い。それは身体機能や構造が個々により様々であるからである。今回の調査から我々は身体機能を一つの基準として、バリアフリー基準について再確認をし、今後更に例数を重ね、我々の専門性をも見直すことが出来ればと考える。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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