抄録
【はじめに】平成13年度、財団法人川崎市保健衛生事団の健康・検診センターの自主的な取り組みで、本学協力のもと試験的準備事業としてパワーリハビリテーションを施行し、要介護認定者の自立支援と虚弱高齢者の改善において有効な手段であることが検証された。 この結果をふまえ川崎市では、川崎市単独補助事業として、高齢者パワーリハビリテーション推進モデル事業を決定し平成14年度6月より開始した。【対象】川崎市在住で、要介護認定を受けてることを前提として、要介護認定において「非該当」「要支援」「要介護1」「要介護2」と認定されている高齢者を対象とした。年齢は62歳から77歳(平均71.2歳)の男性9名、女性5名の計14名である。内訳は、要支援が1名、要介護1が8名、要介護2が5名であった。また要介護者の原因疾患は、脳血管疾患・パーキンソンによる四肢・体感機能障害、骨・関節疾患、廃用症候群による生活動作障害であった。【評価】参加者への一般評価として、体重・身長・体脂肪率を、運動体力評価として、パワーリハビリテーション実践マニュアルより、握力・開眼片脚立ち(OFS)・ファンクショナルリーチ(FR)・体前屈・落下棒テスト・timed up and go test(TUG)・6分間歩行(6MD)、呼吸機能検査を開始時、終了時に行った。 【方法】パワーリハビリテーションにおけるトレーニング期間は3週間の準備期間(負荷量の決定等)を含め全12週間、週2回とし、概要は、メディカルチェックをエクササイズ前後に施行し、準備運動を15分、コアエクササイズであるマシントレーニングを60分、整理体操を15分の計90分の設計とした。トレーニングマシーンは酒井社製コンパストレーニングマシーンを使用し、下肢系3種類(レッグエクステンション・フレクション、ヒップアブダクション・アダクション、ホリゾンタルレッグプレス)上肢系2種類(チェストプレス、ローイングMF)、体幹系1種類(トーソフレクション・エクステンション)を使用した。【結果】介護保険基本調査より、参加者14人中の要支援1名が非該当に、要介護1の8名のうち非該当が3名、要支援が2名に、要介護2の5名うち要支援が1名、要介護1が3名と10名がすべての基準時間から推定される要介護度が改善した。(全体の74.5%) 運動体力評価については、体前屈以外すべてに改善が認められた。特に、TUG・6MDにおいては、初回時・最終時を比較すると有意に改善を示した(p<0.001)。【まとめ】昨年度に施行された試験的事業と、今年度モデル事業参加26名中全19名が要介護認定者であったが、そのうち15名の要介護度が改善し結果を残した。この結果をふまえ川崎市では、数カ所の地域拠点を置きパワーリハビリテーションを展開する事により実際上の介護予防効果をあげる事を事業計画に示している。実験事業、モデル事業を通して育成してきた専門スタッフもおり、全市的展開によって確実に介護保険での経済効果を検証できると考える。