抄録
【背景】患者のリハビリテーションを考える上で、個々のケースを評価する際、身体機能や環境因子と同時に精神機能も重要な項目となる。また、精神機能で患者のやる気を評価することは、その患者のADLの獲得やリハビリテーションの目標を設定するために有用な情報となる。訪問リハビリテーションサービス(以下訪問リハ)は、介護保険の利用者では訪問看護7または訪問リハビリテーションとして行われ、その目的には精神面の活動の向上もある。【目的】介護保険における訪問看護7および訪問リハビリテーションのサービス利用者(以下利用者)を対象にやる気の調査を行い、その特徴を調査検討した。【対象】平成14年10月現在、盛岡市及び盛岡市に隣接する町村で、事前調査で本研究に協力の得られた4事業所、3施設で調査を行った。調査対象の利用者は理解力に問題がなく、かつ調査に同意の得られた98名中、有効回答が得られた55名(男26名、女29名、平均年齢76.8±9.70歳)とした。回収率は56.1%であった。対象者の要介護度は要支援が1名、要介護1が15名、要介護2が10名、要介護3が14名、要介護4が8名、要介護5が7名であった。【方法】やる気の調査には岡田らのやる気スコア(以下スコア)を用いた。調査は無記名で自記式または介護者の代筆にて行った。やる気に関する検討項目として年齢、性別、基礎疾患、要介護度、在宅療養年数を選択した。基礎疾患は中枢神経疾患39例、整形外科疾患15例、循環器疾患1例であった。在宅療養年数は1年以内23例、1から2年10例、2から3年9例、3から4年3例、5年以上10例であった。スコアは42点満点で16点をcut off pointとし、16点未満をやる気維持群(以下維持群)、16点以上をやる気低下群(以下低下群)として両群間で各検討項目について差の検定を行い、さらに相関を求めた。統計は2群間の差の検定について対応のないt検定、Mann-whitneyのU検定、χ2検定、相関についてPeasonの相関係数、Spearmanの順位相関係数を求め、それぞれ危険率5%未満をもって有意とした。【結果】年齢について維持群72.8±10.6歳、低下群80.0±7.6歳と有意差(p<.01)を認め、さらにr=.421(p<.01)と有意な相関を認めた。要介護度について維持群より低下群が、有意(p<.01)に介護度が高く、さらにρ=.412(p<.01)と有意な相関を認めた。性別、基礎疾患、在宅療養年数では有意差を認めなかった。【結語】介護保険の訪問リハサービスの利用者において、やる気低下群は高齢で介護度が高いことが示唆された。また、やる気に年齢、要介護度が関係することが示唆された。要介護度を改善することは利用者サービスと対経済効果の両面で意義があると考えられ、今後更に増加する高齢者への対策としても、やる気を向上するサービス内容が必要と考えられた。