抄録
当院では平成12年より回復期リハビリテーション病棟が新設された。回復期リハに携わる中で患者が最も望むことの一つが自宅への退院ということを実感する。そのNeedに答える為にも我々PTは歩行やADL獲得に向けリハビリを行っている。しかし自宅退院不可能で転院や施設入所にいたる場合もある。そこで今後より多くの患者を自宅退院に導くため、まずは現状の傾向を把握することが必要と思われた。そこで、これまでの入院患者の退院先と入院時の状態を調査することとした。[対象] 対象は該当病棟にH13.1からH13.12に入院していた患者122名(男性78名、女性44名)である。年齢15から89歳、平均年齢は63歳であった。対象者の疾患は全て脳血管障害患者(脳出血・脳梗塞・くも膜下出血)である。[方法」患者の状態については年齢、高次脳機能障害の有無、ADL能力を見るための機能的自立度評価法(Functional Independence Measure;以下FIM)の点数、歩行能力(FIM同様7段階評価した当院独自の評価項目)、病棟での日中臥床の有無、同居家族を調べ、自宅退院(子供宅への退院も含む)した患者と転院・施設入所となった患者を比較した。[結果] 患者122名のうち89名(73%)が自宅退院、33名(27%)が転院・施設入所となっていた。調べた全ての項目についてこの2群で差が見られ、自宅退院の患者に比べ転院・施設入所の患者の方が自立度が低かった。能力的な部分ではADLの食事以外のセルフケアの項目と、移乗の項目、歩行能力が特に差が顕著であった。コミュニケーション能力、高次脳機能障害の有無については差は比較的小さかった。日中臥床傾向の有無、年齢についても大きな差が見られた。特に転院・施設入所となった患者の約4人に1人が病前一人暮らしであった。転院・施設入所となった患者では、同居家族のいる患者より一人暮らしの患者の方が全体的にFIM点数が高く、入浴動作(清拭・浴槽移乗)と階段昇降以外は平均4以上、歩行能力は4弱であった。反対に自宅退院して一人暮らしの患者は入浴動作と階段昇降以外は平均6以上あり、歩行能力は6弱となっている。[考察] 転院・施設入所となった患者は、自宅に帰るだけのADL能力に達しなかったといえるが、同時に一人暮らしの割合が多いこともわかった。また、自宅退院して一人暮らしの患者のADLのほとんどは制限自立しており入浴動作など比較的難しい生活動作は介護保険などでサービスを用いて一人暮らしできていると考えられる。つまり、これらのことから、一人暮らしではADL能力が比較的軽介助となっても退院と同時に家族と新しく同居して介護力を得るということは難しく、自宅退院するには制限自立以上のADL能力が必要となる場合が多いことが分かった。