理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: QP274
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調査・統計
長期療養型医療施設入院患者のADL変化について
*田中 秀明谷内山 清香井舟 正秀石渡 利浩川北 慎一郎生垣 茂岡田 亮一
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抄録
【はじめに】当院は平成12年4月に開設した介護療養病床96床、医療保険療養病床47床、計143床の長期療養型医療施設である。 今回我々は、当院入院患者におけるADL変化の実態を調査し若干の考察を加えここに報告する。【対象】対象は理学療法(以下PT)を実施している当院入院中の患者で、厚生労働省「障害老人の日常生活自立度」(以下寝たきり度)判定基準で入院時Bランク以上の87例(男性25例・女性62例、平均年齢81.6±9.7歳、平均在院日数536.5±276.3日)であった。疾患の内訳は脳血管障害43例、整形疾患26例、パーキンソン病及び症候群6例、その他の疾患12例であった。【方法】在院日数が1年未満の患者28例をA群(平均年齢84.7±8.1歳、平均在院日数211.2±92.7日)、1年以上の患者59例をB群(平均年齢80.1±10.2歳、平均在院日数690.9±180.4日)に分類した。この2群について入院時と平成14年10月現在(以下現在)のBarthel Index(以下BI)、寝たきり度、厚生労働省「痴呆性老人の日常生活自立度」(以下痴呆度)を調査した。データ処理を行うために寝たきり度の正常からC2までを1から9、痴呆度の正常からMまでを1から8とそれぞれ順位尺度化した。A群、B群でそれぞれ入院時、現在間での比較を行った。またBIについては各項目の比較も行った。統計学的分析はWilcoxon検定を用い有意水準は5%とした。【結果】A群において、BI合計入院時36.8±29.2点・現在35.4±28.6点、BIの各項目、寝たきり度、痴呆度すべてに有意差は認めなかった。B群においてBI合計入院時46.9±30.3点・現在34.6±28.0点で有意な低下を認めた。各項目では食事、移乗、移動、更衣、排便自制、排尿自制で有意な低下を認め、その他の4項目は認めなかった。また寝たきり度、痴呆度に有意な進行を認めた。【考察】BIにおいてA群は有意差を認めなかったが平均値で低下傾向を示した。B群では有意な低下を認め、その中でも食事、移乗の項目でより有意な低下が見られた。食事に関しては嚥下障害の進行により食物形態に変化を加える、胃瘻増設する等の要因で低下したと考えられた。また移乗に関して肺炎等の全身状態の悪化による臥床期間の増大、痴呆度の進行により意思疎通が困難となりPTが円滑に行えなくなる等が考えられた。また、職員間で介助方法の統一化が十分なされていないことも考えられた。当院では維持期から終末期の入院が多く、ほとんどの患者・家族が人生の終末を当院で迎えたいと望んでいる。そのため入院期間は長期にわたりADL能力は徐々に低下していくことが推察された。現在PTでは週2から3回運動療法室で個別対応にて施行している。今後、主な生活の場となる病棟で患者・家族のneed、demandを配慮し環境に適応できるような練習及び指導を行い、職員間の更なる連携を図りながら患者個人に対するADL及び生活の質を向上していきたい。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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