抄録
【はじめに】介護保険導入後、療養型病棟のあり方がよりいっそう問われている。今回、療養型病棟が回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ病棟)の導入によって、どのような影響が見られたのかを導入前後の比較を通して療養型病棟のあり方を検討したので報告する。
【対象と方法】対象は回復期リハ病棟導入前の平成12年7月から12月に療養型病床を退院した理学療法(以下、PT)施行患者36名、年齢82.1±6.5才、男性11名、女性25名(以下、前群)と、導入後の平成13年5月から10月に同病床を退院したPT施行患者30名、年齢78.7±11.3才、男性8名、女性22名(以下、後群)である。方法は退院患者の疾患名、発症からPT開始までの期間、入院期間、コミュニケーション能力、入退院時Barthel Index(以下、BI)、移動形態、転帰先、家屋改造調整の有無、PT訓練内容を得た。統計はt-検定とχ2検定を用い、有意水準5%とした。
【結果】前・後群比較においては、発症からPT開始までの期間は後群に長期化傾向が、入院期間は後群で短期化傾向、入退院時BI比較では入院時が前・後群とも同じレベルにあり、退院時では後群の18.3±30.1点に比べ前群が27.0±30.8点と高得点傾向にあったが、年齢、男女比、疾患分類、コミュニケーション能力、移動形態比較も含め有意差はなかった。転帰先比較では前群で自宅9名(25%)、特養5名(13.9%)、老健施設14名(38.9%)、転院2名(5.6%)、死亡6名(16.7%)、後群で自宅8名(26.7%)、特養7名(23.3%)、老健施設2名(6.6%)、転院5名(16.7%)、死亡8名(26.7%)と有意差(p<.05)を示した。
前群についてみると、入退院時移動形態比較[入院時(ストレッチャー13.9%/車いす75%/歩行11.1%)、退院時(ストレッチャー0%/車いす70%/歩行30%)]、BIに関しては入退院時比較(入院時19.5±20.9点、退院時27.0±30.8点)、退院時転帰別比較(全体27.0±30.8点、自宅53.9±40.4点)、自宅退院者の入退院時移動形態比較[入院時(車いす88.9%/歩行11.1%)、退院時(車いす44.4%/歩行55.6%)]と、後群における退院時セルフケアBIの転帰別比較(全体11.9±19.8点、自宅28.5±23.7点)において有意差(p<.05)を示した。
【考察】今回の研究より、回復期リハ病棟導入にて療養病床入院患者は以前より転帰先として死亡、転院,特養への入所者が増加していること、入院から退院まで移動能力などのADLの変化が少なく入院時より低い得点のBIも低下していることより医学的管理が継続して必要で、介助量の多い重度高齢障害者の比率が増加していることが示唆された。しかし、移動能力の変化がなくてもより高いセルフケア能力を有する自宅復帰者が約25%存在することより、基本動作能力の維持を図り、病棟訓練など積極的アプローチにてセルフケアの改善を図る必要性が示唆された。