抄録
【はじめに】現在、長期経過した患者に対して、理学療法士(以下PT)は関わる必要性を感じているものの十分に関われていない状況がある。私たちは、そのような現状を見直すために、自立度が低下した患者の中で、介助が必要な要因は何か、またPTの介入によって変化が期待できるのかという点に着目し、調査を行うこととした。今回は特に日常生活自立度判定基準において自立と寝たきりの境界に位置するランクBと判定された患者について検討し、今後PTはどのような関わりを持つべきか、考察を加えて報告する。【対象・方法】対象は、当院介護保険病棟に入院中で、障害老人の日常生活自立度判定基準ランクBと判定された患者17名(男性4名、女性13名、平均年齢83.6±5.9歳、在院日数1321±1011.2日、主疾患;脳血管障害16例、心疾患1例)とした。PT10名(平均経験年数3.3±2.2年)が同時に1名の患者に対し、30分以内で評価を行った。事前に各患者の入院日、診断名、合併症、両下肢関節可動域の情報をPTに提示した。評価内容は、ランクBにいる決定的要因の1位から3位までを、環境因子を除く40項目から選択するものとした。さらに、患者17名それぞれについて、自分が関わることでプラスの変化を期待できるか否かを判断した。得られた結果から、PT10名が判断した患者17名の1位から3位までの要因の違いを求めた。また、自分が関わる事でプラスの変化を期待できるか否かの判断の違いも求めた。これらはChoenのkappa(κ)係数を求めて調べた。【結果】1)PT10名が判断した患者17名の1位から3位までの要因の一致率は、平均0.332であった。2)PT10名が判断した患者17名それぞれについて自分が関わることでプラスの変化を期待できるか否かの一致率は、平均0.225であった。3)プラスの変化を期待したPT数が少ない患者においては著しい関節可動域制限と痴呆症状が要因の大半を占めており、判断した要因の一致率が高い傾向がみられた。4)プラスの変化を期待したPT数が多い患者においては選択された要因は様々であり、要因の一致率にばらつきがみられた。【考察】今回の調査結果より、長期化した患者に対するPTそれぞれの着眼点が異なっていたことが判明した。つまり、個々のPTの視点が違うことで、将来に対する見解が異なることを示しており、PTの関わり次第では、患者の問題点を見逃してしまうという可能性がある。このような危険性を各PTは認識することが重要であり、複数のPTで各患者を検討することによって、理学療法の客観性を高めていくことができるのではないかと考える。今後、再度長期化した患者に関し、評価しなおす必要性を感じた。