抄録
【はじめに】これまで我々はリハビリ中の転倒転落等事故(以下事故)に対して、その傾向と対策ならびにその成果について報告をした。しかし外来患者(以下外来)は入院患者(以下入院)に比べ活動度が高く日常生活の自立度も違うことから事故に至る傾向は別の様相を呈しているのではないかとの疑問を感じた。そこで今回外来部門におけるリハビリ中の事故の発生状況と原因の傾向を分類し、その傾向の違いを歩行自立度とADL自立度に注目して入院患者との違いについて検討した。【方法】転倒を「通常接地している以外の身体の床面の接地」とし、外来部門であるクリニックと入院部門である当院の各リハビリテーションセンターにおいてH13年10月1日からH14年9月31日の1年間に起きた事故について、前報告に合わせ事故報告書をもとに以下の4つに分類した。すなわちA;セラピストが患者様を視界からはずしたときB;セラピストの介助不十分C;自主トレーニング中D;待機中である。また事故当時の患者の歩行とADLの自立度についても調査をした。【結果】1、発生状況と原因;外来で発生した転倒12件転落0件のうち10件は歩行による移動中であった。原因は足先部のつまづきが7件ふらつきが3件であった。分類はA;0件B;2件C;8件D;2件で移動も含めた自主トレーニング中に多い傾向だった。一方入院では同期間に転倒9件転落3件がありA;0件B;6件C;1件D;5件に分類された。入院は歩行練習中の介助不十分による事故と待機中患者が動作してしまうための事故が多く見られた。2、歩行及びADLの自立度;外来では屋外歩行自立;9件屋内歩行自立;1件屋内歩行自立から近位監視;1件でADLは自立;10件監視;2件であり歩行とADLの自立度の高さが示された。一方入院では屋外歩行自立;1件屋内歩行自立;2件屋内歩行近位監視から介助;8件歩行不可;1件で病棟内ADLは自立;3件監視;2件介助;7件で歩行もADLも介助レベルが多いことが示された。【考察】事故発生状況の違いは歩行やADLの自立度の違いであると思われた。しかし外来にも事故が有る事から自立度が高い事と事故のリスクが低い事は同義ではないと考えられる。臨床上自立とはその行為が「できる、できない」とは別にその環境に対する適応能力をも評価に加味され判断されるものと考える。活動性の高い患者のつまづきやふらつきは装具の着用状況や靴の適合などの外部環境の問題、モチベーションや全身状態、訓練後の疲労など内部環境の変化などが影響していると考える。したがって、これらの環境のチェックと更に患者の動線の分析や物品備品の位置の検討など環境に対してのより細かな配慮が必要と考える。歩行レベルについても、日常自宅での自立度だけでなく広い空間での身体的精神的変化や多くの人と接触の危険の有ることなどを踏まえた評価が必要と思われた.