理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: QP716
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調査・統計
高齢者の転倒リスクとその関連要因について
*井口 茂松坂 誠應山川 志子片岡 拓巳石丸 将久小泉 徹児森内 晶子田原 弘幸
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抄録
【目的】現在、転倒予防は高齢者の骨折予防、寝たきり予防として全国で様々な取り組みが行われている。高齢者の転倒リスクについては諸家らにより身体機能面などの内的要因や住環境などの外的要因が挙げられている。今回、在宅高齢者の転倒リスクとその要因との関係について検討したので報告する。【対象】長崎市内で実施された転倒教室に参加した高齢者177名(男性35名、女性142名)を対象とした。平均年齢は73.4±6.5歳(58-91)であった。【方法】1)調査項目:転倒リスクに関する評価及び転倒に対する心理状態や日常生活状況など6項目とした。転倒評価は鈴木らによる転倒アセスメント表を用いた。本調査表は転倒リスクに関わる15項目からなり転倒リスクに該当する項目に点数を与え15点満点で評価した。その他、BMI、過去1年間の転倒回数、転倒恐怖(日本語版Falls Efficacy Scale:FES)、老研式活動評価、抑うつ状態(Geriatric Depression Scale:GDS)を調査した。2)体力評価:握力、長座体前屈、開眼及び閉眼片足立ち、Functional Reach Test(FR)、椅子からの立ち上がり時間、Time up and go test(TUG)、6m歩行時間の7項目を実施した。統計的手法は、統計ソフトSPSSを用いて分析し、危険率は5%未満とした。【結果】1)転倒アセスメント:対象者の平均は3.5±1.8点で、転倒リスクの高いものは9点であり、得点は2から3点に分布していた。また転倒アセスメントの中央値を基準とし、2群間の各調査項目及び体力値を比較した。その結果、BMIを除く調査項目の全てと立ち上がり時間、TUG、6m歩行で有意差が認められた。2)転倒アセスメントと他の調査項目及び体力評価との関係:調査項目では、転倒回数とGDSに正の相関がみられ、FESと老研式活動評価に負の相関が認められた。体力測定値では、開眼右片足立ち、TUG、立ち上がり時間と6m歩行とに正の相関が認められた。3)転倒アセスメントが影響される調査項目及び体力値:転倒アセスメントを独立変数とし互いに相関のないBMIを除く調査項目と体力測定の開眼(右)及び閉眼(左)片足立ち、立ち上がり時間、6m歩行を説明変数とし重回帰分析を行った。その結果、転倒回数とFESに有意な関係が認められ、体力測定の項目には有意な関係は認められなかった。【考察】対象者の転倒アセスメントの結果はリスク的には低い傾向にあった。転倒アセスメントと各項目との関係では転倒恐怖、うつ状態などの心理的項目と立ち上がり時間や6m歩行など下肢機能や歩行に関する項目と相関していた。さらに転倒アセスメントが影響される項目は転倒に対する恐怖感が最も強く、転倒経験に基づく心理的不安感や転倒に対する過度な意識が伺われる。そのことが歩行などの下肢機能に影響を及ぼしていることも示唆され、生活範囲の制限を来すことも考えられる。しかし今回体力測定値とは関連が認められず転倒アセスメントの内容の検討や運動耐容能などの体力評価が必要と思われる。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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