抄録
【目的】PT・OT養成施設数の増加にともない,その教育の質が問われてきつつある。解剖学教育においても,PT・OTにとって必須の人体構造の理解を深めるために,また医療人としての資質を養うために,人体解剖実習の必要性が唱えられている。しかし,すべての施設で人体解剖実習の機会に恵まれているわけではない。そこで今回,人体解剖実習の実態を把握し,改善のための方策を考えることを目的とした調査を行った。【方法】全国162校のPT・OT養成施設の専任教官に対して,1)人体解剖実習の実施形態,2)専任教官の要望,および3)人体解剖実習指導のための専任教官自身における人体解剖実習経験の現状について,郵送による質問形式での調査を行った。【結果】提出期限までに回収されたアンケートは78校(回収率48.1%)であった。1)人体解剖実習の実施形態 同一機関に医学科を持つ養成施設の半数は,何らかの形で器官などを剖出する人体解剖実習を行っていた。しかし医学科を持たない養成施設では,このような形での実習実施の割合は少なかった(25.0%)。また人体解剖実習の多くが,医学部などの学生が剖出している最中,またはその後の見学実習であった(84.6%)。これらの養成施設における実習時間は,10時間以下が41.4%を占めていた。2)専任教官の要望 専任教官が理想とする人体解剖実習は,実際に器官などを剖出する解剖実習が最も多かった(61.2%)。また人体解剖実習が必要な理由としては,各組織の3次元的視点からの理解,医療従事者としての責任の認識などが多かった。3)専任教官自身の人体解剖実習経験 医学部解剖学教室において解剖実習を行った(行っている)教官を持つ養成施設は43.9%であった。また,人体解剖トレーニングセミナーなどに参加して解剖実習を行った経験があるPT・OTの専任教官を持つ養成施設は26.6%であった。一方で,肉眼解剖学的な研究を行っている専任教官を持つ施設も多かった。【考察】近年,同一機関に医学科を持つ施設での人体解剖実習実施率は,1998年に調べた結果(33.3%)に比べて増加した。しかし,医学科を持たない養成施設における人体解剖実習の機会は,専任教官の要望を満足させる状況とは言えないことがわかった。その理由として,死体解剖保存法の解釈や運用の相違,PT・OT養成における解剖実習の必要性に対する認識の相違などに加え,人体解剖実習指導教官のマンパワー不足が言われている。よって打開策のひとつとして専任教官自身が解剖実習指導能力を身に着けることが挙げられる。今回の結果より,解剖実習の指導を受けた専任教官を持つ養成施設数は多く,その機会は増えてきていると考えられ,我々の更なる自己研鑽が学生解剖実習教育の充実へ発展するものと考える。