抄録
【目的】今日、高齢社会の到来に伴う医療・福祉現場での療法士の需要の急増は、療法士養成校数の増加に拍車をかけ、一方では、小子化が進み学生数が著しく減少する中、学校間の各差が明確化され、学生の質の低下を招いているという声もある。このような養成校の危機的状況の中、療法士教育の根本を確認し、その行動指針を明確にし、実行することは重要かつ急務と思われる。 前回、自我同一性の視点から養成教育のあり方を検討した結果、実習指導者側の評価と学生側の自己評価は、相互に密接な関連が見られた。そこで、今回は、臨床実習の各期における成績間について分析し、臨床実習評価のあり方についてさらに検討したので報告する。 【方法】対称は、本校理学療法学科、作業療法学科に1995年から1999年に入学した320名のうち、2002年までに卒業し、かつ調査可能であった294名を対象とした。内訳は理学療法学科154名、作業療法学科140名であった。 臨床実習成績は,本校で使用している臨床実習成績判定表を用いた。成績表価表は、「総合評価表」と「項目表価表」の2つで構成され、「総合評価」は、実習全体を通して実習指導者の主観的評価による、A:非常によい、B:よい、C:ふつう、D:わるいの4段階(4,3,2,1)に点数化した。「項目評価」は、知識・技術・態度の側面からなる6項目を、それぞれ総合評価と同様な基準で4段階に点数化した。総合評価は1期から3期までの結果を加算し、項目評価は1期から3期までの項目評価点を平均し、これを実習結果とした。これらの値をもとに各卒業期ごとの各科の学生の順位を求め、総合評価と項目評価同士の比較、1期から3期までの実習結果同士の比較を行なった。【結果】「総合評価」と「項目評価」の各実習ごとの相関をみると、同一実習期間での相関は高かったが、総合評価の各期実習期間、項目評価の各期実習期間における相関は低かった。また、各期の項目評価の平均値の間に有意差はなかった。【考察】臨床実習における学習達成基準に対する意識、すなわち到達目標が指導者ごとに異なれば、おのずとその評価結果は大きなずれを生じ、今回のように実習期間同士の相関はないという結果を生むことは容易に理解できる。これでは、各期で行なわれる指導者からのフィードバックに一貫性がなく、混乱効果を生むものの適切な学習が生じないことになる。今後、理学療法士教育においても、臨床実習前後を通して、適切なフィードバック効果のある客観的臨床能力試験(OSCE)を積極的に導入していくこと、さらに、専任教員が実際に患者を治療する立場にあって、その中で学生の能力に応じた実習指導を直接行うことは、臨床重視の教育カリキュラムを構築する上で極めて重要と考える。