抄録
【はじめに】情意領域はB.S.Bloomによる情緒と意思に関する教育目標群である。臨床実習教育の手引きでは情意領域に問題のある学生は実習の継続が困難となったり、実習指導者が対応に苦慮することが多いと述べている。情意領域の構造は受け入れ、反応、内面化へと進むが、感情が果たす役割は大きいものと思われる。そこで検査測定実習が及ぼす感情への影響を見出すべく、学生の自己認識度と実習指導者の評価ならびに学生へのアンケート調査を実施した。【対象と方法】本校理学療法学科3年生男子19人、女子38人の合計47人、平均年齢26.5±6.5歳を対象に日本理学療法士協会発行の情意的領域の評価項目を参考に改変自作したチャートを用いて自己採点し、また指導者の評価及び学生へのアンケート結果を加味して、実習前後の情意的側面の変化をPearsonの相関係数から比較検討した。【結果】各情意要素ごとの実習前後においてはP<0.01で「積極性」r=0.56のみ相関がみられた。また、実習前の各情意要素間においては「積極性」がP<0.01で「社会的側面」「感情面」と、P<0.05で「関係性」「言葉使い」と相関がみられた。その他「社会的責任」がP<0.01で「関係性」、P<0.05で「感情面」と、「関係性」がP<0.01で「言葉使い」「感情面」と、「言葉使い」がP<0.01で「感情面」とそれぞれ相関が見られた。実習後では「社会的責任」がP<0.01で「規則性」、P<0.05で「感情面」と、「関係性」がP<0.01で「言葉使い」「感情面」と、「言葉使い」がP<0.05で「感情面」と各々に相関が見られた。【考察】第36、37回理学療法学術大会で見学実習では「感情面」を中心とした関連型、体験実習では互いに相関し合う連鎖型と情意的側面の経時的変化を発表した。今回の検査測定実習では「感情面」を中心とした関連型と「社会的責任」「規則性」が並列する連鎖型の混合型となった。この理由として検査測定実習では学生と患者という二者関係が自然発生的に生じる環境への応答ではないかと考える。学生のアンケートからも患者との接遇に関する回答が65%あり、実習指導者の評価でも患者との信頼関係で伸びを示す学生が52%あったことなどからも、患者との接触という非日常的な経験を通して自己をコントロールする必要性があったものと思われる。したがって感情のコントロールの善し悪しが信頼関係や言葉遣い、責任感に反映されるものと思われる。一方、担当時間内は二者関係の中で責任を問われる以上、自らも慄然とする必要があるものと推察する。そのためにも学内での授業方法にグループワークやワークショップ、ロールプレイを積極的に取り入れ、集団内での自己認識を行うことが必要とされる。【まとめ】検査測定実習は感情を中心とした行動パターンを構成することがわかった。感情の抑揚は環境説的要素が大きいため事前に学内において自己を客観視する機会の設定、また感情が及ぼす情意的側面を理解した上での実習指導の必要性が示唆された。