理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: TO093
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健康増進
エアボードのバランス機能に対する即時効果の検討
*安原 健太大渕 修一小島 基永
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抄録
【はじめに】姿勢バランス機能は高齢期に最も低下をきたす機能の一つとされており、動作の不安定性と密接に関連している。高齢者のバランス能力改善に用いられる太極拳は緩やかな運動であり動的バランスに対する効果は明らかでない。本研究ではバランス機能を向上する目的でEQUBIC製のAIRBOARDを老人保健施設の高齢者に用いて、太極拳と比較することでその効果を検討することを目的とした。【対象】S老人保健施設の利用者の内、歩行が自立若しくは近位監視下で可能な方で、研究の内容を伝え、同意を得られた上で、安静時の収縮期血圧が180mmHg以下であることを確認した8名(男性2名、女性6名 平均77.6±4.98歳)を対象とした。【方法】1)血圧・脈拍の測定 2)評価:以下の項目を運動の前後に測定する(各項目2回ずつ測定する) 1.Timed Up and Go Test(TUGT) 2.Functional Reach Test(FRT) 3.開眼片脚立位保持時間 4.膝伸展筋力測定:徒手筋力測定値(OG技研製MUSCULATOR GT-10を使用)3)トレーニング方法 1.足踏み運動 2.膝の屈曲・伸展運動(スクワット) 3.つま先立ち+スクワット(踵をボードから離して、接地する際に膝を屈曲させ、再び踵を挙げると同時に膝を伸展させる)運動終了毎に1分間の休憩をとり、運動2.終了後と運動3.終了後にBP・HRを測定した。 エアボード上の運動との比較に、バランス能力改善に用いられる太極拳を模した、重心をゆっくりと移動させ、前方に歩行する運動(以下太極拳歩行とする)を平行棒内で行い、前後での測定位の変化を調べた。4)再評価 小休憩をとった後、同じ評価を行った。(評価の順番はランダム)検定にはWilcoxonの符号付き順位和検定を用いて、危険率5%未満を有意水準とした。【結果】エアボード上での運動前後に、FRTの向上が有意に認められた。太極拳歩行運動前後ではFRTの記録が低下していた。両運動とも、他の項目では有意差は認められなかった。【考察】エアボード上の運動による変化の結果は、動的バランス能力の指標であるFRTで有意な向上が見られた。今回用いたエアボードの特徴は、足踏みやつま先立ち運動で、足部が接地した際に不安定な床面を作り出し、それに対する身体の姿勢制御を促せること、従来のバランスボードに比べ安定性が高く、虚弱高齢者でも立位で安全に行えることやバランス訓練に用いられるつま先立ち運動などを行う際に接地時の衝撃を緩衝でき、下肢関節への負荷を軽減することができる点などが挙げられる。よって、エアボードの即時効果は、歩行が不安定な症例に対する歩行訓練前のバランス能力の向上を目的に用いることができると考えられる。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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