理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: TO094
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健康増進
高齢の低体力者に対する24週間のペダリング運動の効果
*金澤 浩岩本 久生小林 亜紀子板谷 麻美白川 泰山浦辺 幸夫
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抄録
【目的】高齢で寝たきりに近い低体力者に対する運動療法の効果は乏しい。それは、ひとつの運動課題の反復が中断してしまうことに起因している。そのため、理学療法の時間と費用の負担が大きい割に効果は低くなっている。 我々は、高齢の低体力者に対しアシスト動作によるペダリング運動を反復させ、持久力を含めた体力の向上を運動療法のstrategyとし、24週間のエクササイズでどのような運動効果が得られたかを報告する。【対象および方法】対象は、当院で理学療法を受けている患者で、本研究に同意が得られた10例だった。主な疾患は、脳卒中片麻痺、大腿骨頚部骨折術後、肺炎後廃用症候群などで、開始時平均年齢は78.9歳だった。すべての対象は、当院か当院外で運動療法実施後少なくとも半年以上経過し、いずれも効果がプラトーであるとみられ、10分間の能動的なペダリング運動の遂行は不可能だった。身体動作能力は、(1)介助なしで端座位保持不可能だったもの3例、(2)起立不可能だったもの2例、(3)歩行に介助が必要だったもの5例であり、移動手段はすべて車椅子だった。 エクササイズは、StrengthErgo240(三菱電機エンジニアリング社)を使用した。アシストモードで、クランクの運動速度を8-10rpmに設定し、10分間のエクササイズによる総仕事量と発揮最大トルク値を記録した。エクササイズは週に4回で24週間継続させ、6週毎の総仕事量と発揮最大トルク値の変化と、身体動作能力の変化を検討した。6週毎の各値の検定にはFisherのPLSD法を用い、有意水準は5%とした。【結果および考察】総仕事量については、終了時は開始時の平均2.45倍に増加した(p<0.05)。発揮最大トルク値は、終了時は開始時の平均2.07倍に増加した(p<0.05)。 身体動作能力の変化は、(1)介助なしで端坐位保持不可能だった3例のうち1例は四脚杖で、1例は平行棒内での歩行が可能となり、1例は変化なかった。この3例の総仕事量は終了時には開始時の2.73倍、発揮最大トルク値は2.78倍になった。(2)介助なしで起立位保持不可能だった2例のうち1例は平行棒内監視下歩行、1例は平行棒内介助歩行が可能となった。終了時の各値は2.95倍、2.53倍になった。(3)歩行に介助が必要だった5例のうち1例は単独で一本杖歩行、2例は監視下で一本杖歩行が可能となり、他の2例は変化なかった。終了時の各値は2.30倍、1.80倍になった。身体動作能力に改善がなかった3例については、終了時の各値は0.93倍、1.12倍になった。 以上のことから、プラトーに達したと考えられた10例中7例に明らかな運動療法上の効果が、身体動作能力の再獲得というかたちで得られたことの意義は大きい。したがって、高齢の低体力者に対するペダリング運動は、運動療法にとって有効なツールであると考えた。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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