理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: TP701
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健康増進
高齢者の運動療法における脈拍数と心拍数の違い
6分間歩行テスト時の脈拍数と心拍数
*大平 雅美木村 貞治ゴー アー・チェン神子嶋 誠三好 圭赤羽 勝司斉藤 覚杉田 勇藤原 孝之
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抄録
【はじめに】橈骨動脈触診法による脈拍数測定は,医療,福祉分野で広く普及し,理学療法の臨床においてもその簡便性などから,リスク管理や運動強度の設定法として自覚的運動強度(以下RPE)とともに汎用されている.しかし,運動中の脈拍数測定は容易ではなく,運動を一時中止して測定を行う場合が多い.このとき,実際の心拍数(以下HR)は脈拍数プラス6から10拍/分とされるが,高齢者を対象に確認した報告はほとんど無い.また,施設外の簡易体力評価などでは,HR測定が困難なため,脈拍数,RPEが指標として利用されるが,RPEは運動様式による差も多く,運動処方やモニタリングには脈拍数が主に用いられている.そこで,本研究では,高齢者を対象とした6分間歩行テスト(以下6MWT)時の脈拍数測定の意義と問題点を,HRとの差を指標として検討した.【対象と方法】対象はケアマンション入居高齢者で,調査趣旨と6MWTの説明を受け自ら調査に参加し,メディカルチェックで6MWTを許可された41名(男13名,女28名),年齢75.6±5.6(MEAN±SD)歳,身長155.9±7.8cm,体重55.8±9.5kgであった.6MWTは,できるだけ長い距離を歩くことなどを十分に説明した後,屋内片道20mのコースで施行した.測定項目は脈拍数(以下pulse),HR,収縮期/拡張期血圧(以下SBP/DBP)およびRPEで,pulse(10秒間計測×6拍/分),SBP/DBPはテスト前5分以上の安静期および回復期(テスト終了直後,1分後,2分後,3分後)に,座位にて橈骨動脈触診,聴診法で測定した.HRは,心拍メモリー装置(TKK1876a:タケイ製)を用いて,安静座位から歩行終了後3分(もしくはpulse,SBPがテスト前値の110%未満)まで10秒毎に記録した.その他,歩行距離(以下6MD)および歩数を計測した.分析は,歩行終了後pulse,SBPが3分以内にテスト前値の110%未満に回復したG群とそれ以外のP群に分けて行った.【結果・まとめ】2群間で身長,体重,安静時pulse,安静時SBP/DBP,RPE,歩数に差は認められなかったが,G群はP群に比べ有意に6MDが短かった(p<0.05).6MWT時,歩行直後をのぞき両群ともHRとpulseに有意差はなく,両者はr=0.72から0.92の強い相関を示した.テスト終了直後のpulseは両群とも有意に(p<0.05)HRより低値を示した(G群:113.1±17.2 vs 98.3±14.1,P群:123.4±21.3 vs 105.8±17.7).カルボーネン法の70%HRリザーブを基準にすると,終了直後のpulsseではP群に2例,HRでは両群で数例にやや過負荷(70%HRリザーブの120%以上)の可能性がうかがわれ,pulseのみでは6MWT時モニタリングが不十分なケースがあることが再認識された.しかし,その他の時点においては,pulseとSBP/DBPでも十分に循環器系の回復状況を評価することが可能で,高齢者を対象とした6MWT直後のHRはpulseプラス15から20拍/分とみなす必要があることも示唆された.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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