抄録
【目的】三次元動作解析装置にて歩行などの動作を解析し、得られた床反力や関節角度、関節モーメントなどを用いて手術前後などを比較している。しかし、得られるデータの中で床反力は直接的な値であるが、関節角度や関節モーメントなどはマーカーの変位量と解剖学的データを基に推定された関節中心や標準化された数式モデルにて計算される推定データである。そのため、マーカー貼付部位や身体計測に違いがあると、関節角度や関節モーメントに違いが生じることになる。そこで、マーカー貼付の目的部位と実際の貼付部位との関係を検討するため、マーカー貼付後レントゲン撮影を行い、目的部位と貼付部位の違いを検討した。
【方法】対象は健常者4名(男性2名、女性2名、平均年齢26歳)の健常群とキアリ骨盤骨切り術後の患者4名(女性4名、平均年齢44歳)のキアリ群とした。
方法は、左右の上前腸骨棘に直径25 mmの赤外線マーカーを貼付後、骨盤前後面のレントゲンを撮影した。レントゲン画像より上前腸骨棘とマーカーを認識し、上前腸骨棘位置に対してマーカー貼付位置の違いを上下方向と内外側方向で測定した。
【結果】健常群とキアリ群の上前腸骨棘位置に対するマーカーの貼付位置には違いが生じていた。その違いを平均値で表すと、健常群で右側の上下方向-21.3 mm、内外側方向-8.8 mm。左側の上下方向-26.3 mm、内外側方向-8.8 mmであった。キアリ群で右側の上下方向-21.3 mm、内外側方向-24.3 mm。左側の上下方向-23.1 mm、内外側方向-13.4 mmであった。
【考察】今回得られた結果は、両群とも上下方向、内外側方向に平均10 mmから20 mmの違いがあることが解った。三次元動作解析におけるマーカー貼付や身体計測の違いについて、Stagniらは、大きな誤差を生じると関節角度や関節モーメントに影響が生じると指摘している。しかし、臨床使用における誤差の許容範囲については統一した見解はない。また、我々は、装置より得られる股関節中心位置とレントゲン画像を基に補正を行った股関節中心位置について検討した結果、その値には15mm程度の違いがあり、それぞれの方法での股関節外内転モーメントを検討すると10Nm程度の違いがあることが解った。このようにマーカー貼付位置の違いは、得られる関節角度や関節モーメントに違いが生じることとなるため、より正確にマーカーを貼り付ける方法や衣服の上から貼り付けているため、衣服のズレによって位置が変わることもあり、この点を考慮した方法を考えてなければならない。しかし、正確なマーカー貼付には限界があると考えられるため、我々が行ったレントゲン画像を基に補正を行う方法など、計測後に修正を行う方法も考えられる。